コロナ禍で分散型図書館構想 別府市

加藤勝利
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 【大分】新しい図書館建設を計画している別府市は、新型コロナウイルス対策の影響を受けて事業化を先送りしたのを機に、「リモートライブラリー+(プラス)」の実証事業を13日から始めた。まちなかに図書館の小さな出先をいくつも設け、ウイルス対策のキーワードである「分散型」「リモート」を導入して市民が本と出会える機会を増やす構想だ。

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 市は2019年1月、市立図書館(千代町)が古く手狭なことなどから、野口原の市有地に新図書館施設を整備する計画を打ち出した。今年度は設計に着手する方針だったが、コロナ対策を優先したため見送りとなり、施設計画も数年遅れる見通しとなった。

 そこで市は、コロナ下での新たなライフスタイルの一環として、市内の様々な施設を活用した分散型の図書閲覧サービスを考案。仕組みの有効性や利用者のニーズを検証するための実験に取り組むことにした。

 無人のリモート図書館として市内商業地や市役所など3カ所に書架と読書机を備え、利用者の世代や男女別、滞在時間などをカメラ付きAI(人工知能)システムで解析する。人や場所によって本とのふれあいに違いが出るかといった傾向も調べ、コロナ禍に対応した新図書館づくりの参考にする。市は個人情報に配慮し感染防止策も施すという。期間は2月19日まで。

 リモートライブラリーは、①別府駅東口ワンダーコンパス別府(午前9時~午後6時)②トキハ別府店地下1階フードコート(午前10時~午後7時)③市役所1階総合案内横(午前8時半~午後5時)。いずれも利用無料。それぞれに立命館アジア太平洋大の出口治明学長や市内の児童図書館「おじいさんのもり」の高橋伸子館長らが選んだ絵本や新書、歴史書、随筆など約40冊を置く。

 市は新たに整備する新図書館を中核として、こうした「小さな図書館」とのネットワークを構築する考えを膨らませる。町との連携や市民参加、地域の魅力向上につながる新しいかたちの公共施設を生み出す可能性を視野に入れている。

 長野恭紘市長は「私たちはコロナ禍を経験し、大勢の人が1カ所に集まって行動するだけでなく、今ある小さな施設を活用したネットワーク構築もありうるのだと考えた。それにより図書館のサービスがどうなるか、検証してみる価値はある」と語った。(加藤勝利)

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