自由市場はユートピアか「米新政権、混乱覚悟で対策を」

有料記事

聞き手・青山直篤
[PR]

 急激なグローバル化と、その破綻(はたん)――。現在の話ではない。20世紀前半の市場経済の不安定化は、恐慌と大戦によって世界を分断し、国家の急速な肥大化をもたらした。コロナ危機を経たいま、歴史は一回りし、繰り返すのか。米カリフォルニア大学教授のフレッド・ブロック氏に聞いた。

Fred Block

1947年生まれ。米カリフォルニア大学デービス校研究教授。30年代にナチスの台頭を受けて亡命したハンガリー生まれの経済学者、カール・ポランニーの研究で知られる。

 ――かつて19世紀末~20世紀初頭もグローバル化が進み自由な市場経済が繁栄をきわめた時代でしたが、恐慌と大戦という破局に至りました。コロナ禍で世界は大恐慌以来の試練に直面するとともに、深刻な格差などの問題が改めて顕在化しました。

 「自由な市場経済に任せておけばよいという幻想をあまりにも野放しにすると、金融危機のリスクや環境への負荷が高まる。格差が広がり、通常の民主主義では一般大衆を守れないとの声も強まる。1930年代にこれを背景に台頭したのがファシズム。労働者を守ると称して賃金の国家統制などを進めたナチスが代表的だ」

 ――冷戦終結後の急速なグローバル化を経て、米国でトランプ大統領が登場した背景にも共通しますか。

 「もちろん。トランプ氏が支持されたのは、社会保障の充実や公共事業による道路などのインフラ整備を訴え、ごく普通の大衆を守る指導者として映ったからだ。実際には何もしなかったどころか、社会保障を弱めるなど逆方向のことばかりやっていたのだが」

 ――米国では30年代、ルーズベルト大統領のニューディール政策で国家の市場介入を強めましたが、80年代以降は自由化路線が再興しました。なぜですか。

ここから続き

 「人間は互いに依存し合う一…

この記事は有料記事です。残り744文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら