「金魚電話ボックス」訴訟、芸術家が逆転勝訴 大阪高裁

遠藤隆史
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 金魚の産地として知られる奈良県大和郡山市の商店街が制作した「金魚電話ボックス」が自身の作品の著作権を侵害したとして、福島県いわき市の現代美術作家、山本伸樹さん(64)が商店街側に330万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が14日、大阪高裁であった。山田陽三裁判長は著作権侵害を認定し、山本さんの訴えを退けた一審・奈良地裁判決を変更し、商店街側に計55万円の支払いなどを命じた。

 高裁判決によると、山本さんは2000年12月、電話ボックスを模した水槽に金魚を泳がせ、ボックス内の受話器から気泡を生じさせるなどした作品「メッセージ」を発表。一方、大和郡山市の郡山柳町商店街協同組合は14年、電話ボックスの部材を使い「金魚電話ボックス」を制作し、18年まで市内に展示した。

 19年の一審判決は、山本さんの作品を「発想はアイデアにとどまり、著作権保護の対象とならない」とした。高裁判決は、受話器から気泡を出す表現について、音声を通すための受話器に空気を通し、気泡を出すことによって通話を想起させる表現は創作性があり、作品全体が著作物と認められると判断。類似の作品をつくった商店街側の著作権侵害を認定した。

 判決後に会見した山本さんは「作家として、作品の著作物性を認めてほしいと起こした裁判だった。ほぼ全面的に私の主張を認めて頂いた完全勝訴。今後もこの作品を色々な形で展開していきたい」と話した。商店街側は「対応は今後調整する」とコメントした。遠藤隆史

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