献身介護の末に3人殺害 裁判員が感じた悲劇の「境界」

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大西明梨
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 介護の末に同居する夫と義父母の3人をタオルで絞殺したとして、殺人罪に問われた福井県敦賀市道口、会社員岸本政子被告(72)に対する裁判員裁判の判決が5日、福井地裁(河村宜信裁判長)であった。一人で介護を担った被告に言い渡されたのは、3人を殺害した事件としては意外な量刑だった。

 被告は2019年11月17日午前0~2時半ごろ、自宅で義母志のぶさん(当時95)、義父芳雄さん(同93)、夫の太喜雄さん(同70)の首をいずれもタオルで絞め、窒息死させたとして殺人罪で起訴された。

 この日、法廷にこれまでの公判と同様、車いすに乗り、黒いスーツを着た被告が現れた。白髪を後ろで一つに束ねている。河村裁判長に促され、証言台のいすに座った。これから言い渡される判決を前に、小柄できゃしゃな背中が少し丸まってみえた。

 「主文、被告人を――」。量刑が言い渡された。それを聞いた被告は、か細い声で「はい」と言った。

 続けて判決理由が読み上げられる間、被告は顔を裁判長や裁判員の方に真っすぐ向けた。

 裁判長は語りかけるようにゆっくりと読み上げた。

 判決では、被告が一人で担った過酷な介護の実態が明らかになった。

「私たちが気付いていれば…」処罰望まぬ遺族ら

 被告は、地元で建設会社を営む夫を支えた。明朗な性格だった。

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 2016年から義父母の介護…

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