八ツ場と高崎方面がより近く 待望のトンネル開通
【群馬】今年3月に完成した八ツ場(やんば)ダム(長野原町)の地元で、水没地区から移転した住民らの再出発を支える生活再建事業が大詰めを迎えている。18日には、ダム周辺と高崎方面を結ぶ新たな幹線道路として期待される「大柏木川原湯(おおかしわぎかわらゆ)トンネル」が開通した。今回の開通で、県による道路建設や砂防施設の整備がすべて完了した。
開通したトンネルは長野原町川原湯地区と東吾妻町大柏木地区を結ぶ片側1車線の約3キロ。県によると、国道406号を経由して高崎方面に向かう場合と比較して、移動時間を約30分短縮できるという。
ダム建設で高台に移転した川原湯温泉などへの観光振興や、地元住民の利便性向上などを目的に建設された。7・6キロあった406号の雨量通行規制区間を通らずに行き来できるようになる。一般車の通行用の事業費は約42億円という。
トンネルは、ダム本体工事に使う石材などを運ぶため国が2008年に貫通させた。翌年誕生した民主党政権のダム建設見直しに伴って工事は凍結され、貫通したまま使われずにいた。
ダム建設の再開後、14~19年に工事用道路として利用され、東吾妻町から約10キロのベルトコンベヤーで石材を運んだ。役目を終えたベルトコンベヤーの撤去などが遅れ、19年4月から一般車が通行できるように県の整備が始まったが、ダム完成には間に合わなかった。
18日にあった開通記念式典で長野原町の萩原睦男町長は「町にとって希望が持てるトンネルだ。紆余(うよ)曲折があってこの日を迎えられた」とあいさつ。ダムや整備されたインフラの活用については「本当の意味での勝負、スタートはこれからだ」と述べた。
旧温泉街で旅館を営み、現在は移転先でカフェなどを経営する豊田幹雄・川原湯地区ダム対策委員長(54)も「コロナ禍の苦しい中にあって明るい話題。買い物や通勤などでも便利になる」と歓迎する。
この1年で、キャンプ場を備えたJR川原湯駅前の「川原湯温泉あそびの基地NOA」や、「八ツ場湖(みず)の駅 丸岩」などの地域振興施設も相次いで完成。ダム湖を遊覧する水陸両用バスやJR吾妻線の廃線跡を走る自転車型トロッコなどの営業も始まった。豊田さんは「完成した施設や道路をどう活用していくかが重要になる」と話した。