戦後75年の今年、HBC北海道放送は「北海道と戦争」をテーマに特集・ニュース企画26本を放送した。担ったのは若手記者らだ。シベリアに抑留された大伯父の足跡を追い、1万を超す道内出身の将兵が没した沖縄戦の体験者の声に耳を傾けた。戦禍の実相に迫るシリーズから2本が31日のTBS系の特番「記者たちの眼差(まなざ)し」で放送される。
昨年10月、信用金庫から転職した山下功陽(こうよう)記者(30)の大伯父・中崎良一(よしかず)さんはシベリア抑留者だった。復員後は月形町で家業の農業を手伝い、その後、警備会社に勤めた。生涯独身を貫いて9年前、92歳で世を去った。
この夏、山下記者は大伯父の軌跡をたどろうと思い立つ。天皇と皇居を守る近衛師団に配属され、旧満州の部隊へ転じて戦後、シベリアに抑留された。収容所では、味が悪くて今どきの子どもなら見向きもしないようなパンも油断すると仲間にかすめ取られた――、親族から伝え聞いていたのはその程度にすぎない。
きょうだいも他界し、健在なのは妹テル子さん(87)だけ。山下記者の祖母である。「兄は当時の話を全然してくれなかった。話したがらなかったね」
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語りたくない体験など戦争を…