「ホストしか笑顔にできない人もいる」 ミナミの20歳

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細川卓 遠藤真梨
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 大阪の「夜の街」を代表する繁華街・ミナミ(大阪市中央区)。仕事やお金、刺激や居場所を求め、各地から人々が集まる。

 今年8月、新型コロナウイルスの感染拡大の「第2波」にともない、大阪府吉村洋文知事は「感染拡大の震源地になっている」として接客や酒類の提供を伴う飲食店に休業と営業時間の短縮を要請。「ミナミが危ない」というイメージが定着してしまった。そしてこの冬、ミナミは3度目の休業、時短営業要請のただ中にある。

 「震源地」と呼ばれた街を去る人も少なくないが、この街に残り、様々な思いを抱えながら働き暮らす人たちがいる。そんな人々の物語を紹介する。

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 開店前。一心不乱にスマホを眺め、客にLINEを送り続ける。

 「コロナ前より連絡は密です。ピンチな時こそ差がつくから」

 源氏名は「せな」(20)。25人が在籍するホストクラブ「Ai For You」で、1年で売り上げNo5まで駆け上がった。

 6人きょうだいの末っ子。生まれる前に両親が離婚し、母の女手一つで育てられた。勉強が嫌いで、高校は1年生の夏にやめた。落ちこぼれと言われ続け、「金を稼いで、成人式で同級生を見返してやる」とホストの世界に身を投じた。

 「ホスト」や「夜の街」はコロナ感染拡大の元凶のような扱いを受けた。「職業柄ある程度は仕方ない」と前置きした上で、「満員電車でもランチでも、うつるときはうつる。すべてホストや夜の店の責任にされてもとは思う」。

 女性をだまして金を巻き上げていると揶揄(やゆ)されていることも知っている。「夜の街や風俗で働く女性の中には、家族や友人にも言えない傷がある。この仕事でしか笑顔にできない人もいることをわかってほしい」

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 夜、宗右衛門町の花屋。ブランド物の財布を小脇に挟んだホストが花束の注文を終えると、足早に夜の街へと戻っていった。

 「気持ちを届ける仕事をしたくて」

 「biotop心斎橋店」で働く前、鵜戸(うと)亮一さん(34)は倉庫で働いていた。電子部品の梱包(こんぽう)と発送を3年繰り返したある日、人生に面白みがない、喜ばれるものを届ける仕事がないかと考えた。浮かんだのが花。ネットで検索し、未経験者OKの店に転職した。

 客はホストクラブやバー、キ…

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