カープファン装ってまで…広島の仁義なきビジネス事情

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辻森尚仁
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 広島県のビジネス界には、ご当地プロ野球団カープにまつわる独特の「空気」が存在するという。

 職場はもとより、取引先との関係を円滑にするため、県外からやってきた駐在幹部はカープファンを装うのだとか。昨春赴任した筆者が真相に迫った。

 半年ほど前、ある大手企業で広島駐在トップを務める50代男性に取材した時のことだ。同じ大阪府出身で、意気投合した。打ち解けたところで、応接室にあるカープグッズが気になった。セ・リーグ制覇の記念品がずらりと並んでいる。

 あまりに気になって、取材の合間に好きな球団を聞いてみた。返ってきたのは、関西人にとってはお約束の「熱烈な阪神ファン」という答え。赴任して2年、そのことは封印し続けているという。「地元の方にお目にかかる機会も多い。カープファンとして振る舞う方が角が立たない」

 「朱に交われば赤くなる」とは、人は周囲の人によって良くも悪くもなるという例えだが、広島にやってくる転勤族の支店長や支社長には、こんな不文律が存在するらしい。

 「広島に来れば赤くなる」

 広島で「赤」と言えば、もちろん、広島カープのことだ。

 本当はカープファンではないのにビジネスのためにカープファンを装う人たちのことを「ビジネスカープファン」と呼ぶことがある。特に大手企業の駐在幹部に多いという。実態を探ろうと取材を始めたが、話を聞かせてくれる支店長がなかなか見つからない。

 ある企業の広報担当者にはこう言われた。「しゃべったのが自分だとバレたら広島で生きていけないと申しておりまして……」。大げさすぎると思ったが、広島財界の重鎮にこう諭された。「カープをくさすような話は絶対にしないのが、ここ広島の掟(おきて)なんよ」

「みんなが自分を監督かオーナーと思っている」

 匿名でも話してくれる支店長を見つけたい。広島市内屈指の繁華街・流川(ながれかわ)のスナックのママさんにも協力してもらい、ようやく複数の広島駐在幹部に会えた。

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 ある大手企業の50代支店長…

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