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「血と汗と涙流したお金」不妊治療医院が1億円脱税容疑

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 高額な費用がかかる不妊治療をめぐり、東京都台東区の不妊治療専門医院「秋葉原ART Clinic(アート・クリニック)」のいずれも40代の女性院長と夫が、治療費を売り上げから除外するなどして約2億5千万円の所得を隠したとして、東京国税局査察部から所得税法違反容疑で東京地検特捜部に告発されたことがわかった。

 告発は7日。関係者によると、女性院長と夫は、患者から受け取った治療費の一部を除外したり、架空の広告費を計上して経費を水増ししたりする方法で、2017年と18年の2年分の院長の個人所得約2億5千万円を隠し、約1億円を脱税した疑いがある。2人とも容疑を認めているという。

 会計を担当していた夫が脱税を主導し、院長は違法と知りながらうその税務申告をしていた。脱税して得た資金は金融機関に預けて管理していたという。

 同医院のホームページなどによると、院長は中国出身で、04年に日本の医師免許を取得。東京・新宿のクリニックなどで勤務した後、17年4月に台東区のクリニックを開院し、体外受精顕微授精といった高度な不妊治療を専門としている。「自然周期プラン」の「基本体外受精費用」として24万5千円、成功報酬として18万円と記載している。体外受精や顕微授精などの治療は公的医療保険が適用されない自由診療だ。

 保険診療の場合、患者は医療機関の窓口で医療費総額の1~3割の自己負担分を支払う。残りは診療報酬として患者が加入する健康保険組合などから医療機関に支払われる。医療機関はこれらを売り上げとして計上し、納税している。

 診療報酬の金額は、診療報酬点数によって細かく定められているが、自由診療にはこうした決まりはない。国税OBの税理士は「『言い値』で診療代金が決まる自由診療は売り上げが把握しづらい。特に不妊治療は高額なケースが多く、国税が摘発した意義は大きい」と指摘している。

 女性院長は朝日新聞の取材に対し、クリニックのスタッフを通じて「現時点で取材には応じられない」とコメントしている。

「もう引き返せない」という気持ちに

 不妊治療は、費用負担の重さが受診の壁になっている。治療のオプションも増えており、治療費が膨らんでいるという。

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