覚えのない差出人から届いた封筒「…おやじ。生きてた」
斉藤佑介
9月はじめの深夜。都心のマンションに帰ると、寝ずに待っていた妻が心配そうに封筒を手渡してきた。
差出人は、静岡県にある自治体の福祉課。覚えがない。IT企業を経営する男性(43)は、宛先違いだろうと思った。
封を開くと、生活保護の書類だった。1枚に受給者の名前が書かれていた。
「どうしたの?」
「おやじ。生きてた」
妻にそう言って、ソファに沈んだ。涙があふれた。
父は九州でコンビニ店を経営していた。サラリーマンだったが、実家の酒屋を継ぐために戻り、当時は珍しいコンビニに業態を変えた。国道沿いの店は繁盛し、中学生の男性は誇らしかった。
だが次第に競合店におされ…