ミカンに紫外線当て腐敗抑制 雑賀技術研究所

西江拓矢
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 【和歌山】食品の品質検査装置などを手がけている一般財団法人「雑賀技術研究所」(和歌山市)は、紫外線を当てることで、ミカンの皮に抗菌物質を生成させ、腐敗を抑制する装置を開発し、販売を始めた。保管や輸送中のカビの発生を抑える効果が期待される。

 ミカン農家は、出荷の段階で目視で傷を選別するが、見逃された傷や輸送中にできた傷などが原因で、保管や輸送中に腐敗が進むという。消費者をがっかりさせたくないとの農家の思いを受け、同研究所は、静岡県などとの共同研究を進めた。

 研究所によると、紫外線を照射すると、強いストレスを受けてミカンの自己防衛機能が活性化され、皮の部分にポリフェノールの一種で、抗菌物質の「スコパロン」が生成されて、腐敗を抑える。ただ、紫外線を当てすぎると、皮が黒くなるなどするため、適切な照射時間、強さなどを調整した。

 実験では、一つの実に紫外線の照射区と無照射区を設け、小さな傷とカビをつけて1週間保管したところ、無照射区のほとんどが腐敗したが、照射区では腐敗が少なく、かつ、腐敗してもスピードが緩やかだったという。

 開発された装置は長さ約1・5メートル、重さ140キロ。装置の中で、ミカンをコンベヤーで転がしながら移動させ、むらなく紫外線を照射する。照射時間は20秒から25秒程度。処理量は、1時間当たり、約700キロで、抗菌物質の効果は、2、3週間持続するという。

 和歌山県内の農家で装置の導入が始まったという。同研究所の担当者は「ミカン以外のほかのかんきつへの展開も進めたい」としている。(西江拓矢)

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