武漢を書いたら「売国奴」 作家が直面した冷たい暴力

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武漢=宮嶋加菜子
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 新型コロナウイルスで封鎖された武漢にとどまり、日々の暮らしや社会への思いをつづった「武漢日記」をネットで発信した女性作家、方方(ファンファン)さん(65)の作品が中国で出版できない状況になっている。本人が朝日新聞の書面取材に応じ、思いを吐露した。

 「私は今、国家の冷たい暴力に直面している。こんな状況が長く続くとは思いたくないが、今はただ、この冷たい暴力がやむのを耐えて待つしかない」

 方方さんによると、今年出版予定だった長編小説と、すでに出版の契約書を交わしていた作品の全てについて、複数の出版社から出版見送りの連絡を受けたという。

 理由について明確な説明はなかったが、方方さんはこう受け止めている。

 「全国各地の出版社が、みな突然私の作品の出版を取りやめた。上から何らかのプレッシャーがあったと考えるのが普通だ」

 方方さんは都市封鎖直後の1月25日から3月24日まで、日々の思いを連日ブログに投稿。緊迫する街の空気や、友人の死に接した思いを描いた。政府の対応への疑問や批判も率直につづった60編の日記は「武漢の真実を伝えている」と評判を呼び、読者は中国国内外で1億人以上に達したといわれる。

「当局に目をつけられるのを嫌がり…」

 だが4月、日記が「武漢日記…

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この記事を書いた人
宮嶋加菜子
ネットワーク報道本部首都圏ニュースセンター長
専門・関心分野
中国の政治と文化