阿修羅展の反省、今にいかす 興福寺執事エッセーで裏話

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渡辺元史
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 世界遺産の奈良・興福寺の執事で、入山20年の節目を迎えた僧侶の辻明俊(みょうしゅん)さん(42)が、あまり知られていない興福寺や僧侶の日常を描いたエッセー「興福寺の365日」を出版した。奈良在住の映像作家、保山(ほざん)耕一さん(57)が6年前から撮りためた興福寺の映像が収録されたDVDもつく。

 辻さんは奈良県出身。2000年に入山し、04年から広報や企画事業を担当した。今回出版した本には、寺でのアルバイトをきっかけに入山した経緯や、宿直や鹿のふん掃除など寺での生活、空腹に耐えた修行のことなどが6章にわたってつづられている。

 現在の仕事ぶりもしたためた。新弟子時代の朝の日課はお堂の清掃だったが、いまはパソコンの電源を入れメールをチェックすること。僧侶でもあった祖父の言葉「お寺は一掃除、二勤行、三学問」を思い出し、「今の私の姿を見たらきっと叱責(しっせき)するだろう」と自らの生活を顧みる。

 仏像ブームを巻き起こした09年の阿修羅展を担当した話では、阿修羅像(国宝、奈良時代)を信仰の対象ではなく、美術品として展示したことを反省する。入場者は100万人を超えたが、手を合わせる人はおらず、展示台にさい銭を置いたのはたった1人だったという。

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