公的資金を投資にまわす官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)が傘下に新設したファンドの運営会社「JICキャピタル」の社長に就いた池内省五氏(58)は、これから手がける投資について、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める観点が重要だと言います。リクルートから官民ファンドに転じた池内氏はなぜ、DXを重視するのか。こだわりの根底には、世界最大級の求人検索サイト「インディード」を買収した際に受けた衝撃がありました。

拡大する写真・図版インタビューに答える池内省五さん

いけうち・しょうご 京大大学院を修了後、1988年にリクルート(現リクルートホールディングス)に入社。2005年から執行役員、12年から取締役を務め、経営企画や人事の責任者などを歴任。新事業や国内外の企業への投資を数多く経験した。20年6月に退任し、同9月にJICキャピタル社長に就いた。リクルート在籍中に内閣府のタスクフォースや経済産業省の研究会の委員を務めたほか、ソニーフィナンシャルホールディングスなどの社外取締役も務める。

 ――9月の就任発表の記者会見では、DXにかかわってきた経験を投資に生かしていきたいと抱負を語りました。なぜいま、デジタル化による変革ですか。

 「リクルートの最後の約3年間に、社外での講演や他の企業との議論をよくやったのですが、テーマはほぼひとつ、DXでした。日本のたいていの大企業は、米中の企業にDXで圧倒的に後れをとっている。経営層の危機感はすごく伝わってくるんですが、どう具体的に手をつけていいかわからないという悩みがすごく多かった。なんらかのお手伝いができるかな、と思っていました」

 ――そこにリクルートでの経験が生きるのですね。

 「テック企業を買収し、そこのノウハウをリクルートに移植する過程で多くを学んできました。2012年秋に米インディードを買収した。このインパクトが圧倒的に大きかった」

拡大する写真・図版インディードのロゴ

 ――インディードは世界最大級の求人検索サイトで、リクルートの成長を牽引(けんいん)する存在です。

 「自ら手がけた買収でしたが、インディードは買収当時、利益が出ていない会社だったので、当初は厳しい評価もいただきました。でも、結果としてあれだけ成功した、クロスオーバーM&A(国際間の企業合併・買収)を僕は見たことがありません」

 「インディードの開発センターや経営チームを見に行ったときのインパクトは大きかった。開発の考え方の違いがすごく印象に残っています。いまだに忘れられません」

リクルートなら数カ月、インディードは……

 ――どこに衝撃を受けたのですか。

 「スピード感のある開発手法で…

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