群馬、埼玉両県警が10月以降、ベトナム人の元技能実習生らを相次いで逮捕し、家畜や果物が大量に盗まれた事件との関連を調べている。事件の解明はこれからだが、大量の家畜などを売りさばく組織的な犯行が疑われる一方で、背景の一つとして実習生らの生活苦を指摘する見方もある。「労働者」として急増したベトナム人の中には、新型コロナウイルス禍で仕事を失ったまま、帰国できない人も少なくない。
群馬、埼玉両県警が出入国管理法違反やと畜場法違反の容疑で逮捕したのは20人近くにのぼる。一部は自宅アパートで豚を違法に解体したなどとされる。また、家宅捜索された群馬県の貸家からは約30羽分の鶏肉が見つかり、配送センターで肉類や果物を県内外のベトナム人に送る伝票も確認されたという。
ベトナム人の犯罪と実習生の実態に詳しい人は今回の事件をどうみるのか。ベトナムの首都ハノイで2018年秋から、技能実習生送り出し機関の日本語センター校長を務める金谷学さん(39)はベトナム人の犯罪を取り締まってきた埼玉県警の元警察官だ。その経験を生かし、日本の習慣を知らない実習生が犯罪に手を染めないよう指導している。金谷さんに今回の事件について聞いた。
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「群馬の兄貴」を名乗り、逮捕されたリーダー格とみられる男のSNSを見ると、半裸でモデルガンや刀を持った姿を誇らしげに見せている。普通の技能実習生が失踪し、知識不足でやっただけとは思えない。
ただ、こうした「兄貴分」が、金に困っている実習生らを使って犯罪を実行している可能性はある。一部の犯罪でベトナム人全体の評価が下がり、偏見が定着しないか心配だ。
07年から9年半、国際捜査課などで勤めた。うち7年間ベトナム人犯罪を担当した。ベトナム語の通訳官をし、400人近くを取り調べた。7割は留学生、3割は技能実習生で、9割は万引きと不法滞在だった。
共通していたのは、当時逮捕…
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