「もう元には戻れない」コロナ感染、住吉美紀が流した涙

有料記事患者を生きる

南宏美
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 朝6時過ぎ、目覚めるとまず白湯(さゆ)を飲む。4匹の愛猫にごはんを用意し、ベランダに出て観葉植物に水をやる。

 太陽の光を浴び、外気を感じながら「今日は何を着ようかな」と思いをめぐらせる。

 フリーアナウンサー、住吉美紀(すみよし・みき)さん(47)の1日はいつもこんな風に始まる。そして、東京都千代田区にあるTOKYO FMに向かう。

 平日は毎朝9時から2時間、自身のラジオ番組「ブルーオーシャン」に出演する。NHKを退職しフリーになった翌年から務め、9年目だ。

 「ラジオは大切な社会インフラで、自分もその一部」という覚悟がある。ちょっとした体調の変化を感じとっては早めに対処し、自分の声で、様々な情報や思いを届ける日々を積み重ねてきた。

 中国で昨年末、後に新型コロナウイルスが原因とわかる最初の肺炎患者が見つかった。年が明けると国内でも患者が確認され、2月にはクルーズ船での集団感染、学校の臨時休校にまで発展した。3月、東京五輪パラリンピックの延期が決まった。

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念入りに消毒していたのに

 住吉さんは番組でもこうした話題に触れ、自身も仕事や食料品の買い出し以外での外出は極力控えた。スタジオでは音量ボタンなど手に触れる場所を念入りに消毒し、顔回りにつけるヘッドホンは私物を使うようにした。

 3月末、お笑いタレントの志村けんさんが新型コロナによる肺炎で70歳で亡くなったことが報じられた。多くの人が衝撃を受け、正体がしれないウイルスへの不安が社会に広がった。

 「毎日、住吉さんの声で同じ習慣やリズムで過ごせ、すごく心が安定しています」。リスナーからはそんな声が届いていた。住吉さんの中で、「絶対に感染しないようにしなくちゃ」という思いがさらに強くなっていった。

 4月7日には安倍晋三首相(当時)が首都圏など7都府県に対し、緊急事態宣言を出した。

 約1週間後の15日。人との接触を減らす方法を番組スタッフと模索していた住吉さんは、初めて自宅からスマホを使ったリモート放送に挑戦した。

 放送が終わるころ、「コホン、コホン」と軽いせきが出た。風邪のひき始め用に常備する漢方薬をのんだ。

 翌日、少し体が火照っているように感じ、体温を測ると37度ちょっとあった。平熱は36度台前半。「日中で体を動かしていることが影響しているのかな。リモート放送を始めた緊張やストレスのせいかな」。そして、ふとこんな思いがよぎった。「もしコロナだったらどうしよう」

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