コロナ死者数に地域差 大幅減の東京、冬に不安の兆しも

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阿部彰芳 野口憲太 月舘彩子 三上元 編集委員・辻外記子
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 東京を起点に全国に広がった新型コロナウイルスの「第2波」は、感染者数だけでみれば春の「第1波」を大幅に上回る。だが、同じように感染拡大しても、死者数には地域差がある。東京では大幅に減り、大阪や福岡、愛知は増えた。高齢者への感染の広がりが差につながったとみられる。

 「様々なところでクラスター(感染者集団)が起きている。これを早く閉じることが大事だ」。29日にあった政府の新型コロナ対策分科会後の会見で尾身茂会長はクラスター対策の遅れに対し、危機感を示した。

 北海道では23日、札幌市内の高齢者らが入居するグループホームやホストクラブでクラスターが起き、新規感染者が51人で過去最多を更新。青森県弘前市では今月に入り、飲食店でクラスターが発生し、市内の病院にも感染が広がった。

 歓楽街から病院、高齢者施設へ。「3波」到来が心配される今、地方都市で起きていることは夏に大都市が経験した構図でもある。

 29日の分科会で示された報告書では、ウイルスの遺伝子解析などの結果もあわせて、第2波は東京都の「新宿由来」だと明記した。5月下旬から、接待を伴う飲食店を中心とした歓楽街で、感染者が急速に増え、表面化しづらかった。そして、近隣の各県、さらに大阪、福岡、愛知へと時間差で拡大した。

大阪・福岡・愛知の3府県は増加傾向

 報告書では、飲食店などでのクラスターを起点に、職場や家庭内、さらには高齢者施設などに感染が広がった例があったと分析。高齢者に感染が広がれば重症化リスクが高まるため、こうした広がり方はもともと懸念されていた。

 大阪府では、6月半ば~9月末に9医療機関、23高齢者・障害者施設で起き、感染者は675人に。それ以前の医療機関のクラスターは6施設で計284人だった。福岡県でも8月以降のクラスターの中心は飲食店から医療機関、福祉施設に移った。

 新規感染者が少なかった6月を除き、第1波の3~5月と第2波の7~9月の各3カ月を比べると、第2波の全国の感染者数は4倍に増えた。死者数は300人近く減って601人だった。今夏は無症状や軽症の人への検査が増えたため、単純な比較はできないが、死者の割合(致死率)も全体では大きく減った。

 だが、大阪は1・4倍、福岡は2・3倍、愛知は1・5倍に死者が増えた。この3府県では、若年者の感染者が増えた後、重症化しやすい80代以上の感染者も3・5~5・6倍に増えた。

 一方、第2波の感染者が約2万人で最多の東京は、80代以上の感染者数はどちらもほぼ同じ。死者は7割減った。神奈川、埼玉、千葉の各県も第2波で死者は減った。この4都県は、5月の緊急事態宣言解除後も感染者が減りきらず、7月上旬まで感染者の大半を占めた。この間、他の地域より感染リスクを避ける傾向が続いたとの見方もある。

■都内、院内感染の死者も減る…

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この記事を書いた人
辻外記子
くらし科学医療部長代理
専門・関心分野
医療・ケア、医学、科学