NMB48での10年 吉田朱里さん「泥臭く居場所を」

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聞き手・阪本輝昭
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 アイドルグループ「NMB48」のメンバーで、「美容系ユーチューバー」としてブレークした吉田朱里(あかり)さん(24)がNMB48を「卒業」する。大阪での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)のロゴマーク審査委員を務めるなど、多彩な活躍で注目された。デビューから10年。アイドル史に足跡を残し、満を持しての卒業……? いや、本人の気持ちはそう単純でもないらしい。(聞き手・阪本輝昭)

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 ――コロナ禍で、NMB48も観客を入れる劇場公演が長期間できませんでした

 吉田 「会いに行けるアイドル」をコンセプトとする私たちは、劇場公演や握手会でファンの方々と直接交流できることを当たり前に思ってきた。その場を突然失ったとき、何ができるのか。ファンの人たちをどう元気づけ、自分たち自身もどう気力を保てばいいのか。途方に暮れたし、ある意味ではアイドルの存在理由について最も真剣に考えた時間でもありました。

 4月に予定されていた私のプロデュースイベント「アカリンフェス」も開けませんでした。ファッションショーとライブを組み合わせた大規模なフェスで、私のアイドル人生の集大成となるはずでした。これができればもう卒業しても悔いはないと。でも、大切なファンを感染の危険にさらすわけには絶対いかない。苦しかったけれど、決断に迷いはありませんでした。

 アイドルもファンもお互いに「みんな、今どうしているのかな。元気かな」と案じながら長い時間を過ごしました。いま、少しずつ「日常」が戻りつつある中で、人と人との結びつきの大切さを以前より強く感じます。つらい日々でしたが、失うものばかりではなかったと思いたいです。

 ――NMB48に14歳で入ってから10年になります

 吉田 5年ほどは暗中模索でした。最初はとにかく誰に対してもニコニコ愛想よく。でも人気が出ない。それならと「上から目線」の強気なキャラクターに転じてみたら、これも不評。

 どこか無理している部分があったんでしょうね。そうこうするうちにグループに後輩も大勢入ってきて、自分はお姉さん格に……。焦りもあって、「私を推さない運営が悪い」「私を見つけてくれない世間が悪い」と、その頃は全てを他人のせいにしていました。

 ――2016年2月にユーチューブチャンネルを開き、メイク動画の投稿を始めます

 吉田 今でこそ著名な芸能人の方もどんどんユーチューブに参入していますが、当時は「職業アイドルがなんでユーチューブ?」という反応が多かった。落ち目のアイドルが暇つぶしを始めたと受け止めた人もいたでしょう。でも私の動機はシンプルでした。当時SNSに投稿していた短いメイク指南の動画を喜んでくれるファンがちらほら現れていたんです。メイクは大好きだし、私が一番「素」で楽しめるジャンルだったから。これなら無理なく続けていけそうだって。

 ひとつだけ決めたことは、どんなに忙しくても、ずっと動画投稿を続けようということ。今まで何をしても中途半端でしたから。

 ――その動画が想像を超える話題を呼んだ、と

 吉田 最初に投稿したのが「巻き髪」が崩れない方法を解説する動画だったと思いますが、反響がすごかった。芸能人のメイク術は「企業秘密」であって安売りしないもの、ましてや芸能人はメイク前の顔など人に見せないもの。そう思っていた人が多かった。アイドルへの「あこがれ」を壊す可能性もあったし、ファンの一部が離れる不安もあった。でも、あこがれを狙うだけではもう限界にきていた。私にとってメイクやファッションは単なる技術ではなく、自分が自分を好きでいるための工夫。同じ気持ちの人は多いはずで、ノウハウを惜しみなく共有することで「一緒に前へ進もう」という大きなメッセージになると思いました。何より「アイドルも私たちと同じフツーの人なんだな」と思ってほしい。結果としてそれが共感を得たのかなと思います。

 ――G20サミットのロゴマーク審査委員もしました

 吉田 審査委員を務めたのはもう2年前ですが、人生最大の緊張感でした。首相官邸に入ったのも初めて。「これ、かわいい」とか「若い人は好きそう」とか、私なりの感性で頑張って審査しました。でも、重要な国際会議のロゴなので「かわいい」だけでは足りず、日本を表現する要素や、歴史や文化を踏まえた広い視点も求められます。

 私はメイクやファッションを一人ひとりの単位で考えてきました。貴重で光栄な経験でしたが、今思うと私だけ場違い感がありましたね(笑)。

 ――11月リリース予定の新曲「恋なんかNo thank you!」で初めてセンターポジションに立ちます

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 吉田 アイドルとして真ん中…

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