意見聴く県の手法、ダムの影響を問題視 熊本知事へ意見

渡辺七海 村上伸一
[PR]

 7月の豪雨災害を受けた球磨川の治水対策をめぐり、蒲島郁夫知事がダムに反対する複数の市民団体から意見を聞いた20日の会合。団体の参加者からは、川辺川ダム建設による影響を指摘する意見や、流域住民に意見を聴く県の手法を問題視する声が上がった。

     ◇

 参加4団体のうち、子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会(県民の会)など3団体は事前に、県などが2回開いた検証委員会に対し、16項目の公開質問状を提出していた。期限の19日までに回答はなかったが、20日の会合の冒頭で県側が答えた。

 検証委が住民参加型でなかった理由は、「検証は国・県・流域市町村のデータをもとに客観的な事実確認が必要だったため」と説明。国が示した川辺川ダムの治水効果などの算出根拠などについては、国土交通省八代河川国道事務所のホームページ(HP)上に掲載するなどと答えた。

 県民の会の中島康代表は、県が回答したことに礼を述べた上で、HP上での掲載に触れて「国交省が住民に親切な説明をしているようには感じない」と説明責任を問うた。既存の市房ダムや瀬戸石ダムの検証をしないことも疑問視した。

 清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会(手渡す会)の木本雅己事務局長は「(人命が)どうしたら救えたのかをまず最初に議論すると思っていた。ところが検証委では触れていない」と指摘した。

 県民の会の土森武友事務局長は、知事が流域住民・団体の意見を聴く会合の告知が開催の直前であり、時間帯も平日昼や土曜昼に限定され復旧作業や仕事のある住民が参加できないとして、開催方法に問題があると訴えた。蒲島知事が2008年に川辺川ダム計画の「白紙撤回」を表明する前に意見を聞く場で得た「民意」と、今回得られる「民意」は比較できないと指摘した。

 手渡す会の緒方紀郎事務局次長は、川辺川ダムが流水型ダムとして建設された場合の河川環境の悪化を指摘。ダムの効果の根拠をHPで掲載するとの回答に対し、「HPを見ろはあまりにもひどい。ちゃんと検証しないと未来に禍根を残すことになる」と批判した。

 蒲島郁夫知事は会合後、報道陣の取材に、「(団体の)皆さんの意見はダム問題について長くやっているので、説明も非常に説得力があった」と述べた。国交省に説明責任を果たすよう求める声には、「どういう意見があったかを踏まえ、国交省にお伝えします」と話した。(渡辺七海、村上伸一)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません