「約束」果たされず、河川氾濫で被害続く 登米市津山町

角津栄一
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 昨年の台風19号によって氾濫(はんらん)した宮城県登米市津山町の南沢川では、1年経った今も復旧工事が続いている。支流を含む計10カ所での氾濫は、住宅浸水のほか道路や橋の寸断といった被害をもたらした。地域住民は、約20年前に県と交わした治水事業に関する「約束」が果たされていればと悔やむ。

 北上川に流れ込む南沢川は、たびたび浸水被害をもたらしてきた。今月8日、「横山地区災害から人命財産を守る会」の西條清貴会長(69)は、台風の接近予報を気にかけていた。昨年の台風19号の襲来で、近くを流れる南沢川が氾濫し、自宅は床上浸水の被害が出た。

 「今年は幸い台風が来ていないが、毎日、来なければいいと願っている。昨年の台風で川には土砂が大量に堆積(たいせき)して、水を流す能力が下がっている。本当に心配なんです」

 西條さんが会を発足させた約10年前から、南沢川を管理する県に対し、毎年のように堆積土砂の撤去や河道拡幅を要請してきた。だが、返答は芳しくなかったという。「県の予算もかなり厳しいということで、工事は本当に遅々として進まない」と嘆く。

 県と旧津山町は2001年、治水対策に関する覚書を交わした。国が実施する北上川改修事業に合わせて、県が南沢川整備を進めるという内容だった。北上川改修事業は約10年前に終わったが、県が実施中の河川整備は計画の約4割にとどまる。

 今年2月には、旧津山町の住民と県による南沢川の治水対策に関する意見交換会が開かれた。その場で、住民代表が「約束」の不履行を指摘した。

 「国と県が足並みをそろえて、北上川改修事業の完了時期に南沢川改修をめざすという覚書のことを、ご承知でしょうか」

 問いかけられた県担当者は、「昨今の厳しい財政事情で思うように進まず、皆さまにご迷惑をおかけしている。なかなか思うようにいかなかったところは、ご了承いただきたい」と述べるにとどまった。

 県は、南沢川の台風災害についての復旧工事は今年度中に終える見通しだという。ただ、河川整備そのものの完了時期については、「予算状況もあり、いつまでとは言えない。河川周辺は田んぼがあり軟弱地盤。事業費もかかる」としている。(角津栄一)

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