難病と闘う女性、台風被害乗り越え11日にライブ 

平井茂雄
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 筋力が徐々に低下する難病「筋ジストロフィー」と闘いながら歌手として活動する女性が、昨秋の台風15号で被災した千葉県君津市の実家の再建を機に、11日に実家で感謝のオンラインライブを開く。「台風被害を身近に感じてもらい、まだ復興していない被災者にエールを送りたい」と話す。

 「10年後には車いす。その後は寝たきりになる」。小澤綾子さん(37)は、17年前の20歳のとき、医者に宣告された。

 10歳のころから走るのが遅くなり、歩き方がおかしくなっていった。複数の病院を回ったが原因が分からない。大学病院で病名が分かった20歳の時には、手すりなしでは階段を上ることができなくなっていた。「このまま周りに迷惑をかけるばかり。生きていく意味があるのか」と絶望し、自宅に引きこもった。

 暗い気持ちを引きずっていたリハビリ中、担当医に「下を向いている人には誰も寄ってこない。一人で寂しく死ぬんだね」と言われ、はっとした。「死ぬのは怖いし、生きていくしかない。それなら、少しでも前を向こう、と」。留学などに取り組むようになった。

 2012年、インターネットを通じて知り合った同じ病気の男性が、歌と引き合わせてくれた。男性は30年以上寝たきりで、歌をつくるなどしていた。高校時代にバンドでボーカルをしていた小澤さんと「CDを出そう」と意気投合。小澤さんは「初めて自分が肯定された気分で幸せになった」。しかし、その2カ月後に男性は亡くなった。「私は何年後かに実現すればいいと思っていたけど、彼には『今』だった」。そして、「病気が進行しても前向きに生きること、やりたいことは、今、全力でやることの大切さを教わった」と話す。

 14年、男性と企画したCDを出した。同時に「この病気を多くの人に知ってもらいたい」と、働きながら歌手や講演活動を始めた。難病と闘いながら前向きに明るく歌う姿は共感を呼び、イベントなどに呼ばれ、海外でも歌うように。「信じられないくらい世界が広がった」

 昨秋、台風15号で実家が被災。屋根が吹き飛び、家は水浸しになった。祖母と父母は無事だったものの、修理には多額の費用がかかるため、一時は再建をあきらめた。だが、「生まれ育った大切な場所を失いたくない」と比較的安く修理してくれる業者を探し、今年8月に修理を完了。地元や周囲への感謝の気持ちや、まだ被災生活から抜け出せない人たちを元気づけたいと、初めての実家ライブを企画した。

 ライブは11日午後2時から、動画配信サービスのユーチューブ(「小澤綾子」で検索か、https://www.youtube.com/channel/UCGiKbLSPQcGo8dB-4aCzWiA別ウインドウで開きます)で。オリジナル曲で自身の人生を歌った「希望の虹」や家族の絆を歌った「My Family」、「上を向いて歩こう」など計7曲を披露する予定。「多くの人に台風被害の大変さと、『今』を全力で生きる大切さを感じてもらえたら」と話す。(平井茂雄)

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