「水一滴たりとも譲らぬ」リニア工事反発 静岡の真意は

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聞き手・阿久沢悦子 加藤裕則 宮川純一 矢吹孝文
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リニアを読み解く【中】

 JR東海リニア中央新幹線で、静岡工区の工事が足踏みをしている。静岡県山梨県の人たちが「トンネル工事の影響で大井川の水量が減ったり、自然環境が壊れたりしないか」と心配し、声を上げ始めている。「水を一滴たりとも譲らない」と激しい言葉も出る。その真意を7人に聞いた。

①染谷絹代・静岡県島田市長「水守るため論理的主張を」

 ――リニア中央新幹線の協議が長引いています。

 「JR東海は、地元が大井川の水をこんなに大事に思っていて抵抗するとは思わなかったのでは。不信感を強くしたのは、JR東海が我々の要望するデータを出さず、ボーリング調査を追加することもなく、誠実な態度で我々に向き合ってこなかったからです」

 ――最近、市長は定例会見などで「一歩先を考えるべき時が来ている」と発言しています。その真意は。

 「流域市町はJRに対し、『不信がある。工事はダメだ』と言い続けてきた。でもどういう課題があり、解決策があるのか具体的にしっかり話し合ったことはない。一方で、我々はJR東海には、データや論拠を求めている。そうした中で、一般の市民には連日報道されているが、なんだかよくわからない、ということになってはいないか。不安や課題に対して解決策の有無を含めた今後のフローチャートみたいなものがないと、先が見えない感が募る」

 ――一歩進めることは、譲歩ではありませんか。

 「違います。厳しい現実の中で、絶対に水は守り抜くという強い決意を持っています。揺らぐことがない」

 「『水は一滴たりとも譲らない』というのは思いの強さや決意を表す言葉。我々は法律的な根拠も含め、論理だった組み立てをしていかないと、ただダメだ、不安だと言っているだけでは、太刀打ちできない」

 ――JRに求めることは。

 「どんなに有識者会議で議論しても、水の問題は不確実性が残る。トンネル工事をやってみて、大きな出水があるかもしれない。だから細かく情報を提供してもらわなければならないと思っている」

 「本当に向き合う気があるのなら、JR東海は我々の思いや水への不安に対応するための組織や体制を、まず最初に作るべきだ。それがないと、30年、40年のちまで水の状況を見守り、何かあれば第三者委員会などで原因究明をすることができない」

 ――今後の見通しをどう考えていますか。

 「普通なら話し合えば論点が集約されていくのに、リニアではどんどん拡大拡散されていく。それがわかりにくさの一つでもある」

 「水のことについて変な妥協をしようとは一切思っていないけれど、その手段は現実的に考えていかないと進まない。有識者会議の後、県の専門家会議にかけるとなると数カ月では解決しない。その間、JRと国交省が何も手を打たないと言えるだろうか」

 「国の持つ権限は大きい。過去の大規模事業でも、地元の懸念や不安のうち論拠なきものについては、時間切れで論破されてしまった例がある。リニアに関しても、我々が県民や国民の支持を失ったら押し切られる可能性がある。民意に賛同していただくためには、我々の主張も当然だと思っていただけないと。私が今、主張したい点はそこにある。この状況をどう打開していくのかという我々の側の誠実さも問われている」

リニア中央新幹線をめぐるインタビュー企画の2回目。この後は大井川流域の静岡県川根本町の町長や、リニア訴訟原告団長、リニア工事現場の地権者など、さらに6人に地元の真意を尋ねます。「リニア反対」とひとくくりにできない、さまざまな考え方が見えてきます。

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■②鈴木敏夫・川根本町長「崩…

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