台風で浸水 迷う高齢者の避難、独自「物差し」で判断

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聞き手・稲垣直人 聞き手 伊藤智章 編集委員・伊藤智章
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 多数の高齢者が犠牲となった7月の九州豪雨をはじめ、大型台風や記録的大雨による被害が各地で絶えない。台風の襲来が本格化する9月。今あるべき治水とは何か。

台風の通過後に進んだ浸水 渡辺圭司さん

 昨年秋の台風19号で、私たちの特養(埼玉県川越市)でも近くの越辺(おっぺ)川が氾濫(はんらん)し、約150センチの床上浸水に遭いました。100人の入所者・利用者は何とか施設内の階上に避難して無事でしたが、水害対策の一環として、避難に伴う課題も多いと思います。

 被災したのは、昨年10月12日から13日未明にかけてでした。12日時点で、これまでにない大型台風が来る予報も流れており、万が一に備える時間的猶予はありました。夜勤の職員は通常5人ですが、12日夜は職員24人が待機しました。

 避難には、自分の住まいの外への避難と、自分が住む建物の階上に移る「垂直避難」があります。この特養には、平屋のメイン棟2棟のほかに、垂直避難できる2階建ての別棟があります。21年前の豪雨で被災した際、近くのケアハウスに避難した経験から建てられたものです。

 ただ、どちらのタイプの避難でも、とくに高齢者の避難はリスクを伴います。水害そのものを認識できない認知症の人、晴天でも移動がままならない車椅子や要介護の人も多いからです。避難中に転倒する危険もありますし、避難先での排泄(はいせつ)ケアをどうするかなど懸念材料は尽きません。

 「結果的に空振りになっても避難を」とよく言われます。もちろん命を守ることが第一なのですが、避難の際のリスク、避難をサポートするマンパワーの問題、避難にかかる時間などを考えると、避難すべきかどうかの判断に迷ってしまうのは否めません。

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 私たちの特養には、避難のタ…

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