A3用紙で「建造」した船169隻 祈り込め作り続ける

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武田遼
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 クルーズ船、貨物船、移民船――。どんな船もA3用紙1枚で「建造」してしまう男性がいる。その数、実に169隻。手がける船は全て実在するものだが、今夏、はじめて架空の船を作った。コロナ禍のせいで会うことができない、病気の友人に贈るためだった。

 男性は兵庫県西宮市に住む柴田衞(まもる)さん(74)。12年前に製薬会社を退職。船を作ろうと思ったきっかけは神戸市中央区にある「戦没した船と海員の資料館」を訪れたことだった。

 柴田さんの足が止まったのは大阪商船(現・商船三井)の輸送船「黒龍丸」を紹介するパネル。妻の順子さんの父、庄直人さん(当時25)が乗っていた船だった。太平洋戦争中の1944年10月24日、フィリピン・マニラから台湾・高雄に向かっていた黒龍丸は米潜水艦に撃沈された。392人が亡くなったが、庄さんは日本の駆逐艦「呉竹」に助けられた。

 柴田さんは義父の庄さんを喜ばそうと、持ち前の手先の器用さを生かし、菓子箱で黒龍丸の模型を18日間かけて作った。以来、毎日5時間ほど机に向かい、船作りに熱中。「悲劇を生む船は作りたくない」と、軍艦は庄さんを助けた呉竹の他に作っていない。

 柴田さんは今夏、神戸高校時…

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