約7年8カ月にわたり、日本外交のかじ取り役を担った安倍晋三首相。安定した長期政権下、継続性のある取り組みが可能となり、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」や「戦後外交の総決算」を掲げた。世界は安倍外交をどう評価するのか。対峙(たいじ)した国の足元から報告する。

拡大する写真・図版日中韓首脳共同記者発表で登壇する安倍晋三首相(右)と韓国の文在寅大統領=2019年12月24日、中国・成都

 「韓日関係の発展に多くの役割を果たしてきた安倍首相の突然の辞任発表を残念に思う」。安倍氏の辞意表明後、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は大統領府報道官名の短いコメントを出した。「多くの役割」について、韓国政府関係者は「具体的に頭に浮かばないので、抽象的な表現になった」と明かす。

 2012年末に第2次安倍政権が発足した際、日韓関係はすでに悪化していた。この年の夏に李明博(イミョンバク)氏が大統領として初めて、日韓が領有権を争う島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸したからだ。

 日本の植民地支配を受けた韓国では、平和憲法の改憲に意欲的な安倍氏を、過去を反省しない「極右政治家」とみなす向きが強い。13年2月に発足した朴槿恵(パククネ)政権も、安倍氏の歴史認識には懐疑的だった。

 同年12月に安倍氏が靖国神社を参拝すると、朴氏は「村山談話や河野談話を否定する言行で、協力の環境を壊している」と批判。安倍氏との首脳会談の条件として、慰安婦問題での誠意ある対応を求め続けた。

 日韓の対立が解けないなか北朝…

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