集落で最後の1人、浮かぶ「消滅」 もう目指さぬ人口増

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菅原普 上田学 宮沢崇志 編集委員・真鍋弘樹
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 1億2427万1318人。総務省が8月5日に発表した今年1月1日時点の日本人の数である。

 前年から50万5046人減り、減少幅は1968年の調査開始以来、最大となった。中核市規模の都市が丸々消えた勘定になる。社会の中軸となる15~64歳のいわゆる「生産年齢人口」は日本人全体の6割を切り、過去最低を更新した。

 東京、神奈川、沖縄以外の道府県がすべて人口減少の坂道を下っているなか、地図から消えようとしている地区は全国にある。

 そんな里の一つ、徳島県つるぎ町の旧一宇(いちう)村にある十家(といえ)集落を昨冬、訪ねた。最後の3キロは車が通れず、山道を歩くしかない。

 老いた両親から畑を引き継ぐため集落に戻ってきた上家(かみけ)敏一さん(62)は、数年前からここに1人で住んでいる。父は亡くなり、足を痛めた母親が弟とともにふもとに下り、高齢住民たちも次々と去った。

 コロナ禍を経た最近の様子を電話で尋ねると、こう話した。「1カ月間、誰とも話さず、寂しい時もあるが、コロナに感染する心配はない。こういう状況だと1人がええでよ」

 一宇村は15年前、2町と合併してつるぎ町になった。戦後の最盛期には8千人近い住民がいたが、現在は700人余。現在残る32集落のうち、半数以上の19集落で、いずれ住民がゼロになるとみられている。

 総務省などによる昨年の調査によると、「いずれ」または「10年以内」に無居住化の恐れがあると自治体が答えた集落は全国で3197に上った。徳島県だけで267集落が消える。

 6年前、「消滅」という言葉が列島を揺さぶった。

世界に先駆けて急激な人口減少と少子高齢化に直面している日本は、いわば「限界先進国」状態です。人が消える現実を見据え、どう縮んでいくのか。正面から考えます。

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