御巣鷹の父に会いに行く いまなら言える「ありがとう」

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森岡航平
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 日航ジャンボ機墜落事故から12日で35年。新型コロナウイルスは遺族の慰霊登山にも影を落とす。遺族の高齢化が進む中、感染リスクを考え参加を控えた人もいる。不安を感じつつも、少しでも大切な家族の近くにいたい、と登った遺族もいる。

コロナ禍でも「父に会える場所」へ

 夫や飼い犬と訪れた横浜市の宮沢淳子さん(60)は、父の榊原勝さん(当時52)が眠る墓標にそっと手を合わせ、「久しぶりに会いに来たよ」と心の中で語りかけた。

 一人娘で「怒られた記憶がないほど溺愛(できあい)してくれていた」という。取引先だった勤め先に用事を見つけては顔を出したり、急な頼みでも嫌な顔一つせず車で送り迎えしてくれたり。ただ事故当時の淳子さんは25歳。「何となく面倒くさい」存在だった父に「ありがとう」もろくに言えなかった。

 事故の翌年に結婚し、2人の子をもうけた。3年前には双子の孫、昨年9月には3人目の孫ができた。母や祖母の立場になり、「親孝行は何もしてあげられなかった」との思いが募る。

 淳子さんにとって、御巣鷹の尾根は「父に会える」場所だ。今後の管理を心配する母(85)の意向で、約5年前に奈良県にあった父の墓をなくした。その代わりに尾根の墓標を朽ちにくい石製に建て替えた。新型コロナの感染拡大で気をもんだが、緊急事態宣言も解除され「行かない理由はなかった」。

 孫が小学生になったら連れてくるつもりだという。父の顔を思い浮かべ、「子煩悩だったから、きっと喜ぶだろうな」と淳子さん。「私たちを見守ってくれてありがとう。お父さんのおかげで、みんな幸せに暮らせているよ」と伝えた。

「来年は登れるだろうか」

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