国家にあらがったがゆえに、毒を盛られたのか――。ロシアの反政権活動家アレクセイ・ナバリヌイ氏が意識不明の重体となり、毒物中毒と診断されました。ナバリヌイ氏とは国民や政権にとって、どのような存在なのでしょうか。彼が不在になれば、ロシアは今後どうなるのでしょうか。筑波大学の中村逸郎教授(ロシア政治)に話を聞きました。
――ナバリヌイ氏とは、どういう人ですか。
1976年生まれの44歳。反プーチン政権運動の指導者で、ブロガーとしても活動しています。2004年に政治活動を始め、モスクワの都市開発に絡む汚職などを追及してきました。弁護士資格を持っていましたが、ロシア最大で旧国営の「アエロフロート・ロシア航空」絡みの汚職を調査していた13年に剝奪(はくだつ)されました。17年以降はロシア全土で無許可の反政府集会を開催してきました。今回は、9月13日からの統一地方選の支援で全国を回っている最中でした。
――どれほどの影響力があるのでしょうか。
ロシアの著名な世論調査組織「レバダ・センター」の今年6月のデータによれば、プーチン氏に次いでインパクトのある人物とされ、特に40代から54歳までの国民に影響力が絶大です。特徴的なのが、ブログやユーチューブなど、インターネットを駆使して政権批判を展開したり、集会への参加を呼びかけたりする点です。寄付もビットコインで募るなどしていますね。英国などにいるロシアからの亡命者にも、彼の支援者が多くいます。
――以前にも拘束されたり、毒を盛られた疑惑があったりと、危険な目に遭っているそうですね。
反政府集会を開催するたびに、何度も治安当局に拘束されています。そのほか、17年には横領罪で有罪判決を受けた後、大統領選への立候補が却下されました。19年には無許可の抗議デモを呼びかけたとして逮捕され、収監中に顔が腫れ上がり、片目が開けられなくなるなどの原因不明のアレルギー症状を発症。毒物を使われた疑惑が浮上しました。
――ロシアではこれまでにも毒物による暗殺や暗殺未遂が疑われる事件が相次いでいますね。
ロシアでは、毒は帝政時代か…
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