「死にたくない」濁流に沈む鉄橋、84歳はしがみついた

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増山祐史
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 記録的豪雨で25人が命を落とした熊本県球磨(くま)村で、濁流に流されながらも一命を取り留めた高齢の男性がいる。鉄橋の柵にしがみつき、力尽きかけたところを駆けつけた消防団員らに救助された。男性は、早めの避難の大切さを改めて痛感している。

 4日朝。球磨川に注ぐ芋川沿いの自宅2階で、一人暮らしの池下義明さん(84)=球磨村一勝地=は「ドン」という鈍い音で目覚めた。窓を開けると眼下に茶色い水が迫っていた。自宅の階段も水没。水は数分で腰の高さまで上がってきた。

 「ここにいたら死ぬ」。対岸の高台までは数十メートル。子どもの頃、もっと広い球磨川を泳いで渡ったことも頭にあり、避難生活に必要な服やタオルを詰め込んだプラスチック製の衣装ケースを手に飛び込んだ。

 だが、土砂混じりの濁流に身動きが取れない。ケースを手放し、両手で水をかこうとしたが、なすすべ無く流された。「もう、だめばい」。あきらめかけた時、体が何かに引っかかった。

 芋川にかかるJR肥薩線の鉄…

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この記事を書いた人
増山祐史
東京社会部|国土交通省担当
専門・関心分野
運輸行政、事件事故、独占禁止法、スポーツ