熱中症の死者、10年で倍増 コロナ対策と両立の工夫は

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山岸玲 渋谷雄介 角拓哉 渡辺洋介 千種辰弥
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 熱中症で命を落とす人が近年、急増している。2010年に統計史上初めて年間1千人を超えて以降、最新のデータがある18年までに計3回、1千人超の死者が出た。18年までの10年間の死者数は、それ以前の10年間からほぼ倍増している。

 厚生労働省の統計によると、熱中症が原因の死者は10年に統計史上最多の1731人を記録。その後、13年は1077人、18年は1581人に上った。いずれも猛暑が続いた年で、特に18年は「災害級の暑さ」と呼ばれた。

 死者数が公表されている18年までの10年間では計9055人。その前の99~08年は計3954人、89~98年は計1708人だった。冷夏だったり猛暑が続いたりして、年ごとの増減があるため単純に比較はできないが、10年ごとに2倍以上増えている。

 救急搬送される人も高止まりしている。総務省消防庁によると、5~9月の統計を取り始めた15年以降でみると、17年までは5万人台だったが、18年は9万5137人に急増。昨年も7万1317人だった。今年は本格的な暑さが到来する前だが、6月1日~7月19日に9221人と、昨年同時期より約1・2倍多い。

 死者数の増減は、最高気温35度以上の「猛暑日」の増減とおおむね同じだ。100地点以上の観測点で猛暑日を記録した日数は、死者数が1千人を超えた10年が25日、13年は19日、18年は28日と他の年と比べて多かった。00年以降では、猛暑日が0日だった03、09年の死者数は200人台と少なかった。

 気象庁が公表している夏(6~8月)の平均気温を基準値(10年までの30年間の平均)と比べても同様の傾向だ。18年までの10年間は平均で0・67度高かった。その前の10年間は0・32度高く、98年までの10年間では0・10度低くなっている。10年ごとに見ると、気温の上昇と熱中症の死者数の増え方もおおむね比例している。

 熱中症患者の動向に詳しい国立環境研究所環境リスク・健康研究センターの小野雅司・客員研究員は「熱中症患者の増加は、高温日の増加が強く関連している」と指摘。「暑さを感じにくい高齢者や自分で暑さへの対応ができない幼児は、周囲が見守ることが重要。屋外作業や部活動などは、現場管理者がしっかりと予防策を講じる必要がある」と話す。(山岸玲)

避難所の熱中症対策

 今月4日の記録的豪雨で球磨(くま)川が氾濫(はんらん)するなど甚大な被害が出た熊本県では、国のプッシュ型支援で届いたエアコンが熱中症対策に一役買っている。現場では新型コロナウイルス対策として換気も必要で、室温管理との両立に苦慮している。

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 熊本県内では、10市町村で…

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