なぜコロナ禍の今? 難病患者ら190人の大移動計画

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天野彩
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 独立行政法人国立病院機構(本部・東京都)は、重い病気や障害のある患者が入院する八雲病院(北海道八雲町)の機能を札幌市函館市に移転し、同病院を8月末で廃止とする計画を進めている。新型コロナウイルスの収束前の長距離移動は患者の命に関わるとして、家族や職員は移転延期を強く求めてきたが、計画は見直されていない。不安が解消されないまま、8月中旬の移転が迫る。

患者の半数以上に人工呼吸器

 「今移転する必要性が全く感じられない」「患者の命を危険にさらしたくない」。6月中旬、札幌市内で開かれた記者会見で、八雲病院に勤務する2人の看護師は口々に話し、移転の延期を訴えた。会見を開いた全医労北海道地方協議会の鈴木仁志書記長は、「このままではがんセンターの二の舞いになる」と、道内で集団感染が発生した病院名を挙げて危機感をあらわにした。

 八雲病院は、全身の筋力が徐々に低下する難病「筋ジストロフィー」(筋ジス)、重度の身体障害と知的障害を併発する「重症心身障害」(重心)の専門医療機関。筋ジスの患者には気管切開をせず、人工呼吸による診療をする全国的にも有数の病院だ。6月30日現在、194人が入院する。患者の多くは寝たきりか車いすで生活し、半数以上が人工呼吸器を着けている。

札幌の移送先まで250キロ

 機構は8月18日からの4日間で、同院の患者を約250キロ離れた北海道医療センター(札幌市)と約80キロ離れた函館病院(函館市)に移す計画を進めている。患者の高齢化による合併症の治療の強化と、見舞いにくる家族の負担軽減が移転の理由だ。

 患者の移送は民間救急車や福…

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