走る緊張 「感染拡大か」 停泊の大型クルーズ船

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姫野直行 秦忠弘 市野塊 野口憲太 阿部彰芳
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 2月5日午前5時過ぎ。環境省の正林督章審議官は海上保安庁の船で、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスに近づいた。全長290メートル、幅37・5メートル、水面から高さは50メートル超。「見上げるような大きな山」だった。乗船者約3700人で、新型コロナウイルスのPCR検査を受けた31人中10人が陽性――。「感染がすでに広がっているかもしれない」と緊張が走った。

 船は1月20日に横浜港を出て、鹿児島、香港、沖縄などに寄り、2月3日に横浜港に戻った。その前日、香港で下船した男性が感染していたと厚生労働省に通報が入った。3日夜に検疫が始まり、4日夜、感染が疑われた乗船者の検査結果が出た。感染者の多さに厚労省は騒然とした。直後、医師免許を持つ正林さんの派遣が決まった。これまで厚労省で感染症政策に長く携わり、2009年の新型インフルエンザ流行時も対策にあたった実績が買われた。今は厚労省新型コロナ対策推進本部事務局長代理も兼務する。

 官邸は14日間の「全員の船内隔離」を決めていた。正林さんは船に乗り込むと、まっさきに船長に会い、「乗客に部屋にいるようアナウンスしてください」と頼み、感染者を運ぶ協力を求めた。そして、船医と一緒に陽性者がいる客室に向かった。ドアをノックし、一人ひとりにN95マスクをつけた口で「陽性でした。これから病院に搬送します」と伝えて回った。

 感染者は翌6日も10人。さらに7日は41人に上った。検査をどこまでするのか。政府の専門家会議の前身となる専門家会合が7日に開かれ、その後公開された議事概要によると「全例を検査することまで必要はない。有症状者のみでよい」と合意された。だが、感染者が膨れあがる中、厚労省は全員検査へとかじを切った。

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 香港の男性は出航から5日後…

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