健康づくりとコロナ対策の共通点 行動につながる理解を

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弘前大学大学院医学研究科社会医学講座特任教授・中路重之
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 日本の都道府県でもっとも寿命が短い青森県では、「短命県返上活動」が、大々的に展開されています。日々の健康づくりに取り組む活動ですが、新型コロナウイルスによる影響はないのでしょうか。20年近く前に始まった時から、中心となってかかわってきた弘前大学特任教授の中路重之さんが寄稿しました。

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大事なのは三つの手順

 大震災などの未曽有の事態が起きた時に、ともすれば健康づくり(青森県でいえば短命県返上活動)の存在感が一気にかすんでしまうような錯覚に陥ります。一言でいえば「健康づくりどころではない」と思われがちです。

 違います。新型コロナと向き合わざるを得ない今こそ、健康づくりの意識を強く持つチャンスだと考えています。実は、コロナ対策と健康づくりの間にはまがいようのない共通点があります。それは、①ヘルスリテラシー(健康教養)②社会の盛り上がり(キャンペーンなど)③環境整備(法の整備など)、という三つの手順です。

 このうち、必須なのは、ヘルスリテラシーです。健康情報を理解し、それを行動に移す能力のことですが、筆者はその中でも正しい知識を身につけることが大切だと思います。「知識があっても行動にはつながらない」とはよく言われることで、それは一部その通りですが、知識がなければ行動が起きるはずがありません。リテラシーが不十分で「間違った方向」に突っ走ってしまう恐れもあります。

 うまくいった例として、喫煙の例を紹介します。JT(日本たばこ産業)の調査によると、日本人の男性の成人喫煙率は、1965年の82・3%が2018年には27・8%に下がりました。この成功はどこから来たのでしょうか。

 最大の理由は、喫煙による健康障害が科学的に証明され、それを人類が知ることになったことです(①リテラシー)。ただ、知識だけでは物事は解決しません。世界を圧倒的な禁煙の嵐に追い込んだのは、米英両国に端を発した大規模な禁煙キャンペーンです(②社会の盛り上がり)。そして、ついに社会環境が整備されました。健康増進法など数々の法律制定です(③環境整備)。

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 新型コロナウイルスの感染が…

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