アライグマ殺処分、現場の苦悩「何度やっても心が痛む」

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中村瞬
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 捕獲したアライグマをどう殺処分するか――。自治体がこんな課題に直面している。原則として駆除される「特定外来生物」だが、環境省動物愛護の観点から「適切とは言えない」とする水死といった方法も各地で取られてきた。最近になって処分のやり方を見直した自治体には、動物愛護以外の理由もあった。

 群馬県南西部の藤岡市では2019年度、131頭のアライグマを捕獲した。特に夏場に多く、月40頭前後に上る。住宅の庭が荒らされたり、建物を傷つけられたりするといった被害が出ている。

 これまでは捕獲すると、捕獲用のケージごと用水路やため池などに沈めて水死させたり、食物や水を与えず衰弱死させたりしていた。7月下旬以降は、二酸化炭素を送り込んで窒息死させる方法に切り替える。

 農林課の担当者によると、水死させる方法は「数分で絶命し、動物の苦痛が比較的少ない」。衰弱死は「炎天下に置いておけば、半日程度で死ぬ」という。方法を変えるのは、「より苦しまないように、という観点から」だ。切り替えに先立ち、4月からは殺処分を猟友会に委託し、市民へのケージの貸し出しも取りやめた。

 近くの富岡市も、水死だった処分方法を19年度からガスによる窒息死に変え、処分自体も猟友会へ委託するようにした。農林課によると、職員の心理的負担を軽減するためだという。

 なぜ、アライグマが悩みの種なのか。

 農林水産省鳥獣対策室によると、アライグマによる農産物被害額は00年に3600万円だったが、11年には3億8300万円と10倍以上に増えた。以降は横ばいとなり、18年は3億7500万円だった。農水省の担当者は「繁殖力が高く、捕獲が追いついていない」と話す。

 アライグマの駆除には主に、外来生物法に基づく防除と、生活環境や農林水産業、生態系の被害防止のための鳥獣保護法に基づく捕獲がある。各自治体は自ら捕獲したり業者に委託したりしている。

 外来生物法に基づくアライグマの捕獲頭数は、環境省のまとめで06年度の3800頭から16年度には3万5千頭と9倍以上に増えた。鳥獣保護法に基づく有害駆除数は、06年度の6200頭が16年度には1万5千頭になった。

 殺処分の方法はどう定められているのか。

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 環境省は「動物の殺処分方法…

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