民主化運動の象徴、見下ろすビル 国安法の監視機関発足

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香港=益満雄一郎
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 香港国家安全維持法(国安法)が反体制活動とみなす行為を取り締まる中国政府の出先監視機関「国家安全維持公署」が8日、発足した。香港当局を監督・指導し、重大事件には自ら対処する強い権限を持つ。国安法により中国が直接統制を行うための体制が整う一方、香港市民の間では言論や表現の自由が萎縮する動きが広がる。(香港=益満雄一郎)

 公署のオフィスは、香港島のビクトリア公園を見下ろすビルに開設された。

 同公園は市民による大規模デモのスタート地点になったり、毎年6月4日に開催される天安門事件の追悼集会の会場になったりしてきた。香港の民主化運動の象徴となってきた場所だ。

 民主派団体幹部は朝日新聞の取材に「デモに参加する市民を威嚇するのが狙いだろう」と述べ、警戒心をあらわにした。

 公署では8日早朝、発足を記念する式典が開かれたが、中国に批判的な香港の報道機関や外国メディアは招待されなかった。

 中国国営新華社通信によると、広東省共産党委員会常務委員から転身した鄭雁雄署長は式典で、「法律に従い、国家の安全を守る職責を厳格に履行する」と強調。一国二制度骨抜きにする不当な介入だとする外国政府の批判に反論した。

 香港当局を監督・監視する強力な権限を持つ公署は、中国政府が香港で統制を強める象徴的な存在だ。にもかかわらず、国安法施行から1週間余りが経過しても関連の情報は少なく、実態は謎に包まれている。

 オフィスの入り口には公署の看板や中国政府の国章が取りつけられたが、内部が見えないようガラスの壁は何かで覆われていた。

 2人いる副署長のうち、孫青野氏は中国でスパイの取り締まりなどを担う国家安全省系の人物との情報があるが、経歴は不明だ。一部香港メディアは、公署の職員は中国の国家安全維持に関連する政府部門から派遣され、約300人態勢と伝えているが正式な発表はない。

逮捕者のDNAサンプル採取に波紋

 香港では6月30日の国安法施行後も、小規模なデモが散発的に続けられている。ただ、デモの呼びかけが大幅に減ったほか、参加者はスローガンが書かれてない白紙の紙をビラの代わりに掲げたり、紙で顔を覆い隠したりするなど、これまで以上に神経を使うようになった。

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 また、過去にソーシャルメデ…

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