(小説 火の鳥 大地編)60 桜庭一樹 パーンと乾いた銃声が響いた

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 日本軍は上海戦に辛くも勝利。兵士たちも帰国できるはずだった。だが、内陸の武漢などへ逃げこんだ国民政府を追い、さらに進軍することとなった。

 この軍には食料補給がほとんどなく、軍服も薄い夏服のままの者が多かった。疲弊して爆発寸前の兵士たちと、上級指揮官のいない補充部隊が、まるで競い合うように、この十五回目の世界で、殺し、略奪し、民家を焼き払いながら西へ西へと進撃した。

 十二月上旬。南京にたどり着き、南京城を囲むと、各部隊が城内への一番乗りを目指し、味方にも死者を出しつつ、城壁を超え、門を破壊し、突撃した。国民党軍の兵士や市民は逃げまどった。ほどなく南京は陥落。十五回目の世界の日本軍は、国民党兵士、市民、近隣の農村民など、多くの人々を、殺した。

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 日本国内は「支那(中国)に…

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