アイヌ議論の「闘技場」 初代国立館長が描く博物館像

有料記事

聞き手・西川祥一
[PR]

 日本で初めて先住民族アイヌをテーマにした国立博物館アイヌ民族博物館」が7月12日、北海道白老町にオープンする。アイヌ文化の復興拠点「民族共生象徴空間」(愛称・ウポポイ)の中核施設だ。この博物館には、国宝も重要文化財もない。何を展示し、どんなことを目指す施設なのだろうか。初代館長となった佐々木史郎氏(62)に聞いた。

佐々木史郎

 1957年、東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。学術博士。91年4月、大阪大学助教授。2003年4月、国立民族学博物館教授。10年4月、同副館長。16年4月、国立アイヌ民族博物館設立準備室主幹。

「見られる側」「見せる側」を一体化

 ――展示品は700を超えると聞いています。博物館の目玉は何ですか?

 「すぐ目につくのは、サハリンにいた樺太アイヌ民族の『クマつなぎ杭』でしょう。高さが6メートルはある。クマの霊送り儀式『イオマンテ』の際に使われた、子グマをつないでおく杭です。北海道のアイヌ民族の場合にはそれほど高くはないのですが、樺太の杭は巨大でした」

 「ポーランド人の民族学者ブロニスワク・ピウスツキが残した写真のなかに、儀式に使った杭が写っていて、この写真を参考に北海道大学准教授の北原次郎太さんとウポポイ職員で工芸家の山道陽輪さんに制作してもらいました」

 「もう一つは、厚岸湖から出土した板綴(いたとじ)舟の舟底です。厚岸町の海事記念館の所蔵品をお借りしたもので、外洋舟です。17~18世紀、道東のアイヌの人々は、千島列島を自由に行き来し、交易していたのです。小さい舟ですが、潮流に強かったのですね」

 ――ほかの国立博物館との違いは何ですか?

ここから続き

 「展示のコンセプトです。一…

この記事は有料記事です。残り2649文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら