新型インフルの教訓なぜ生かされず 厚労省幹部に聞く

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聞き手・姫野直行
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 新型コロナウイルスの集団感染が起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込んで現場指揮を執った正林督章・新型コロナウイルス厚生労働省対策推進本部事務局長代理。あの経験で得られたものは。そして、「第1波」の流行を踏まえ、何が課題だと考えているのでしょうか。

 ――ダイヤモンド・プリンセス号では乗員乗客3711人のうち700人以上が感染しました。船内はどんな状況だったのでしょうか。

 船内に入ったのは2月5日朝、私の任務は水際で国内の感染を食い止める、感染拡大を制御する、そして船内にいる3700人の健康管理などです。「大変なことを任された」という思いでした。

 苦労したのは、乗客の持病の薬の確保です。乗客の多くは高齢者で、クルーズの期間分は持参しているが、次第に薬が切れてきます。「薬を補充してください」という電話がレセプションにかかってくるようになり、2月10日前後にはもう電話が鳴りっぱなしでした。ただ、外国人の乗客の薬など簡単には手に入りません。みんなの分が届いたのは私が乗船して1週間くらいたってからです。

 ――他にも大変なことはありましたか?

 ずっと部屋にいると、いわゆる拘禁状態、精神的に不安が強まります。「もうこのまま海に飛び込んで死んでやる」みたいな電話がかかってきて、本当に飛び込まれたら一大事なので、とても緊張しました。DPAT(災害派遣精神医療チーム)に対応してもらいましたが、「もし本当に飛び込んだらどうしよう」ってずっと考えていたのでつらかったですね。

 ――クルーズ船での経験から得られた教訓は。

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