第6回「対岸の火事と…」生かされなかった教訓 いま保健所は

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 私たちは果たして新型コロナウイルス感染対策に成功したのか。もっと早く拡大を抑え込み、「自粛」に伴う経済的打撃を減らすことはできなかったのか。日本モデルを誇る前に、感染者が急増していた時期に起きたことを3回にわたり検証する。それが「次の波」に備える力になる。「薄氷の防疫」シリーズ最終回。

【動画】私たちは感染対策に成功したのか。もっと早く拡大を抑え込むことはできなかったのか。「オーバーシュート一歩手前」だったという感染急増期に起きたことを検証する。

「37・5度以上の発熱が4日以上」 検査受けられぬ人続出

 オフィスビルが並ぶ一角にあるドーム形のテント。東京都千代田区が設けたPCR検査センターでは、医師が必要と判断すれば保健所を介さずに検体を採取する。「本人確認から採取まで早ければ2、3分です」と区保健所の山崎崇・地域保健課長。検体を民間検査機関に送ると2~3日後に結果が分かる。4月24日にできて以来、約150人が検査を受けた。

 感染疑いの人が急増していた4月上旬の状況はまったく違った。

 40度近い熱と激しいせきに襲われた区内の一人暮らしの男性(29)は、保健所の相談センターの番号に、スマホから3時間かけ続けたがつながらなかった。「行き場がない気分だった」。オンラインで受診した医師が連絡し、ようやく保健所と連絡が取れたのは発熱から6日目。熱は下がりつつあり、結局検査は受けなかった。

 当時、区保健所には毎日200件超の電話がかかっていた。うち相談センターは当初3回線で3、4人の保健師が対応したのを5回線に、感染症対策の保健師も最大8人に増やした。それでも都内の検査能力が限られていることもあり、1日約10件を区内の病院の帰国者・接触者外来に回すのが限度だった。保健師は検体をどの病院で採取するかや患者の入院先の調整、入院時の付き添い、濃厚接触者の調査、検体の搬送などに、深夜まで追われていた。

 こうした状況は都市を中心に全国で起きた。厚生労働省は受診を望む人のうち、約1割しか接触者外来につながらなかったと推計している。

 「日本は検査件数が少なく…

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