75年残る体験、伝わらない 沖縄戦の悲惨な光景話せず

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岡田将平
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 戦後75年の今年、朝日新聞は沖縄タイムスと共同で、太平洋戦争末期の地上戦で多くの民間人が犠牲となった沖縄戦の体験者を対象とするアンケートを実施した。戦争体験をある程度語ってきた人が多数を占めたが、体験が次世代に「あまり伝わっていない」「まったく伝わっていない」と答えた人が62・5%にのぼり、戦争体験者が抱く危機感が浮き彫りになった。

 23日は沖縄戦の戦没者を悼む「慰霊の日」。両社は計約680人を対象に、4~6月に電話による聞き取り調査を行い、回答者は沖縄県在住の216人。平均年齢は84・8歳で、沖縄戦で亡くなった家族がいる人は71・8%の155人だった。

 「誰にも話していないことがあるなど、まだ十分に伝えられていない沖縄戦の体験があるか」を聞くと、「ある」25・9%、「ない」67・1%だった。

 「体験が次世代にどの程度伝わっているか」との問いには、53・2%が「あまり伝わっていない」、9・3%が「まったく伝わっていない」と回答した。戦争体験をある程度語ってきたかに関わらず、「伝わっていない」と考える傾向は同じだった。

 豊見城(とみぐすく)市の男性(86)は地域の子どもたちに体験を伝える機会があったが「真剣に聞いてもらえず、依頼を断るようになった。孫に話そうとしてもうんざりされる」と語った。小中学校で時々体験を語ってきた北谷(ちゃたん)町の男性(84)は20年前には200人ほどいた地域の慰霊祭に、最近は戦後世代が来ても100人程度しか集まらず「風化している。次世代には全く伝わっていない」と回答した。

 沖縄戦当時5歳だった糸満市の男性(80)は、沖縄本島南部を逃れるさなか、岩陰に川の字で寝ていた母、弟、妹が米軍の攻撃で即死。「悲惨な体験を積極的に話す気にはならない」と、家族の死や戦場で見た光景はほとんど話してこなかったと答えた。

 一方、沖縄が再び戦場になる可能性を聞くと「ある程度ある」が30・6%、「大いにある」が28・2%。「沖縄戦のときも兵器がある場所が狙われた」(那覇市、80歳男性)などと、沖縄の米軍基地の存在を危ぶむ意見が目立った。米軍普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古への移設に対しては、69・4%が「反対」だった。

 今なお、7割超の人が戦争体験による「心の傷」を抱えている可能性もうかがえた。日常生活の中で沖縄戦の体験を突然、思い出すことがあるかを尋ねると、「よくある」が42・1%、「時々ある」が34・7%だった。

問われているのは戦後世代の姿勢

 沖縄戦体験者216人の声を聞けたが、5年前に取材に答えてくれた人のうち、少なくとも20人が亡くなっていた。当事者がいなくなる日は近いと実感させられると同時に、6割が次世代に伝わっていないと感じているという重い事実が突きつけられた。

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