迫害、脱出、流浪27年…たどり着いた日本で見えた希望

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鬼室黎
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 少数民族ゆえに迫害されて故郷を追われ、無国籍のまま27年間も諸国を流浪した旧ソ連出身の男性が今年、日本で難民と認められた。「退去強制命令を出すと地球上で行き場を失う」。無国籍者を難民と認めた判決に救われ、感謝を胸に東京で新たな一歩を踏み出した。6月20日は「世界難民の日」。

 「コロナ禍での暮らしは大変だけど、諸国を流浪した27年間を思えば我慢できるよ」。そう話す男性は、現在のジョージアの首都トビリシで生まれ育った少数派アルメニア民族のトロスヤン・ルーベンさん(52)。

 旧ソ連崩壊直前に独立したジョージア(当初はグルジア)政府による民族差別と迫害が強まる中、1993年に国境検問を受けずに脱出。望んだロシア国籍を得られず、身分を証明できない苦しみを抱えながら、難民認定を求めて欧州10カ国をさまよった。

 どの国からも難民と認められず、苦心の末、偽造旅券で来日したのは2010年。直後に難民申請したものの認められず、12年にはジョージアへの強制退去を命じられた。不認定処分の取り消しを求めて15年に提訴した一審・東京地裁判決では請求を退けられた。

 一方、今年1月の控訴審判決で、東京高裁(野山宏裁判長)は「ジョージア政府は迫害を続けており、難民で無国籍者。受け入れ国は存在しない」として国の処分を取り消し、強制退去命令も無効と結論づけた。

 判決が確定し、手元には在留資格が記された真新しい在留カード。居場所があり、身分を証明できる。堂々と働ける――。起業を夢見て東京都内で日本語を学ぶ日々だ。流浪を続ける中で身につけた英語やフランス語など数カ国語を駆使し、早く仕事を始めて医療保険にも加入したい。

 「人生のやり直しを願う難民は世界中にいる。みんなにも同じようなチャンスがあればいい……」

苦難の連続

多数派のジョージア民族に暴行され、警察官には金を強奪された。助けを求めて渡った欧州では、つばを吐きかけられた。そして東京・新宿でホームレス生活を重ねた。記事後半ではルーベンさんの人生を振り替えりつつ、日本の難民認定の現状を考えます

 長く苦難の旅路だった。

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 旧ソ連崩壊の動乱期、ロシア…

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