新型コロナウイルスの感染拡大で延期されていたプロ野球が19日、3カ月遅れで開幕する。史上初の無観客のため、スタジアムでの観戦はかなわない。少しでもファンに楽しんでもらおうという工夫や感染防止の対策が、球場内外で広がる。間もなく、プレーボール。
「コロナ忘れさせる熱戦を」
東京・神田の飲み屋街にある「リリーズ神田スタジアム」。レプリカユニホームやグッズ、ポスターが壁を埋め尽くす。店で13日、巨人―日本ハムの練習試合を観戦していた会社員、阪間大介さん(28)は「シーズンが始まるのを味わいたくて来ました」。
緊急事態宣言に伴い、店は4月6日から休業し、今月2日に再開した。テイクアウトだけでの営業も考えなかったわけではない。でも店は「野球を楽しむ『場』を提供する店で、料理を売る店ではない。感染拡大防止に全力で努めることが一介の野球ファンにできること」と休むことを選んだ。
プロ野球の開幕が決まり、店の再開を発表すると、すぐに予約の電話が鳴り始めた。座席数は「密」を避けるため、普段の半分の25席。開幕の週末はあっという間に予約で埋まった。店長の高橋雅光さん(42)は「たくさん来てほしいような来てほしくないような複雑な気持ち。野球ファンが集う店からクラスターが発生したなんてことにはしたくないんです」。
3月から資金繰りに向けて動き出したおかげで、融資で当座をしのげる見通しは立った。無観客試合が続く間、球場へ行く代わりに店で観戦するという需要は見込めるが、それ以上に、例年なら東京ドームや神宮球場から試合後に流れてくる客が来ないことへの心配の方が大きい。何より、気軽に飲みに行けるような空気がいつ戻るのか考えると頭が痛いという。
それでも「開幕を待ちに待っていた」と心を躍らせる。店内には大型のテレビが四つ。どの試合を映すかは客の希望で決めるが、開幕戦はこのうち二つが巨人―阪神戦になりそうだ。高橋さんは「ペナントレース終了時点で1位と6位が3ゲーム差みたいな壮絶な戦いになり、振り返ればコロナのことよりも大混戦のことを思い出すようなシーズンになってほしい」。(伊木緑)
換気口からカキーン
ヤクルトの本拠地・神宮球場(東京都新宿区)で練習試合があった12日夕、そばにある日本青年館ホテル15階の球場側の部屋の窓(縦約180センチ、横約85センチ)からは、ボールを投げ、バットを振るユニホーム姿の選手たちの姿が見えた。窓の下の換気口を開けると、打球音やベンチからの選手の声もよく聞こえる。「これがいいんだよな、と喜ぶお客さんもいらっしゃいます」と同ホテルの真田秀実・セールスアドバイザーは言う。
球場と道路1本挟んだ場所に…
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