デニーロ「タクシードライバー」 自意識過剰は青春の病

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編集委員・石飛徳樹
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1976年製作「タクシードライバー」

写真・図版

 「You talkin’ to me ?」(あんた、俺に話しかけてるのか)

 薄笑いのロバート・デニーロが、暗い安アパートの自室で、挑発するように話しかける。部屋には誰もいない。相手は、鏡に映った自分自身だ。この言葉を4度繰り返した後、素早く拳銃を取り出し、勝ち誇った表情で銃口を鏡に向ける……。

 1976年製作の「タクシードライバー」にKOされた人間なら、一度は自分でも真似(まね)たことがあるのではないか。映画史に残る不穏な名シーンだ。

女性にこてんぱんにフラれ、社会への不満を日記に

 デニーロ演じるトラビス・ビックルは、26歳のタクシー運転手。大都会ニューヨークの片隅で、孤独に暮らしている。女性との付き合い方も知らず、大統領候補の選挙事務所に勤めているベッツィ(シビル・シェパード)にこてんぱんに振られてしまう。彼女が電話に出てくれなくなると、逆ギレして勤め先に乗り込み、「お前のような人間は地獄に落ちろ!」と捨てゼリフを吐いて、つまみ出される。

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 トラビスは日記を付けている…

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