「気持ちいいライン」で過ごす 角野栄子さんの自分軸

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 いい季節になったのに行きたい所へ行けない、自由に友達とも会えない……。新型コロナですっかり変わってしまった「日常」をどう過ごせばいいのか、鬱々(うつうつ)としてしまいます。いつもおしゃれで好奇心に目が輝いていたあの人は、こんな日々をどう過ごしているのでしょうか? 「魔女の宅急便」作者で児童文学作家の角野栄子さん(85)に、「初挑戦」だというオンライン会議システムZoomを使って話を聞きました。

相手のことを思うほど会えなく

 ――日本でコロナが感染拡大したこの春以降、角野さんは毎日どう過ごしていますか。

 私は家でひとりでする仕事です。お勤めの人がテレワークをし始めたのと違って、相変わらずひとりで働いています。だから、これまでと比べて生活スタイルが大きく変わったわけではないんですよ。でも、暮らしの細部のあちらこちらがやっぱり違っていますね。

 ――どんな変化が?

 私は、毎日の日課がしっかりと決まっている方なんです。起床は8時。3食同じぐらいの時間にいただいて、午後3時まで仕事をした後は、読書したり、散歩したり。散歩に出ると路地や海岸をぶらぶらして、ひと休みするのは同じ喫茶店です。コーヒーを飲み、ちょっと街のうわさを聞く。それから何軒かのお店をウィンドーショッピング。見るお店も道順もほぼ決まっています。

 それがいまは、散歩にも行けなくなってしまいました。年も年だし、ぜんそく持ちなので、人の多い街中や海岸は敬遠しています。うちは鎌倉なので、海の方も意外と人が多いんです。それとね、何十年も一緒にやってきた編集者の方が訪ねてこられなくなりました。これまでお茶を飲みながら、楽しい話をしたり、報告をし合ったりしていたのですが。娘も「年寄りにうつしちゃいけない」と来ません。相手のことを思うほど会えなくなるなんて……。それが、この病気の恐ろしいところですね。いま実際に会うのは、宅急便のお兄さんぐらい。私の命綱です。

 ちょうどいまみたいに、オンラインで飲み会やおしゃべりするのが流行しているそうですが、どうなんでしょう。会話のリズムや空気の動きみたいなものが伝わらなくて、つまらないんじゃないかしら。

忘れていた日常を再発見

 ――確かに変なタイムラグはありますね。では、あまり楽しくない日々ですか?

 実は、ちょっとうれしいこと…

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