終わりの見えない全力疾走――。ひとり親の子育ての切実さを、関西弁のユーモアにくるんで描いた小説『うめももさくら』(朝日新聞出版)を読むと、そんな言葉が思い浮かぶ。作者の石田香織さん自身もシングルマザー。「ひとり親だけでなく、『助けて』と言えない人たちみんなの物語を書きたかった」と話す。

 神戸を思わせる街で暮らす主人公「ママ」は、同い年の夫と共働きで長女のさくらを育てていた。だが、次女のうめを妊娠中に夫が失踪。離婚して手取り十数万円のコールセンターで働きながら、一人で幼い娘2人を育てる泣き笑いの日々が描かれる。

 出勤前のバタバタの朝、頭が痛いと訴えるさくらに「え、今?」とつい口に出してしまい自己嫌悪に陥るママ。やはり2人の娘を育ててきた作家の実話という。

 「娘は『保健室で寝るからいい』と、そのまま学校へ。うわーっ、と自分を責めました。貧乏も、子どもにさみしい思いをさせるのも自分のせい。そう思い詰めているひとり親は多いと思います」

 文芸賞の最終候補に残った『き…

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