257億円アリーナ、「佐賀に不釣り合い」くすぶる異論

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平塚学 福井万穂
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 3年後の国体開催にむけて、佐賀県がスポーツやイベント用の大型アリーナを整備中だ。建設費は257億円。アリーナをふくむ一帯の施設整備費になると、他の地域の国体を大幅に上回る540億円にのぼる。知事は「佐賀躍動の象徴」と言うものの、地元には「佐賀に不釣り合い」との異論がくすぶる。

 佐賀市のJR佐賀駅から北に約1キロ。4階建て、8400席規模の大型施設「SAGAアリーナ」(仮称)の建設に向けた整地が進む。県はスポーツやコンサートなどのイベント会場に使うと想定する。

 県内では2023年秋に、現在の国民体育大会(国体)にあたる国民スポーツ大会(国スポ)と全国障害者スポーツ大会(全障スポ)が開かれる。県は両大会を旗印に、整備を進める。約40ある国スポの競技のうち柔道、体操、バレーボール成年女子の3競技がアリーナを使う。

 さらに、県はアリーナを建設する一帯で、体育館や陸上競技場などのスポーツ施設が集まる「SAGAサンライズパーク」の整備も進める。やはり国スポと全障スポが大きな理由だ。

 パークの整備費は、新築する水泳場106億円、陸上競技場や球技場をはじめとする5施設の改修費などを含めると、283億円に達する。アリーナと合わせると540億円にのぼる。そのうえ、パーク全体の運営委託料が約10年で50億円余りかかる。

 佐賀県の次に国スポ・全障スポを開く滋賀県は16年、06年度からの10年間に各地であった国体の開催経費をまとめた。競技施設の新設や改修の「施設整備費」は平均126億円(一部未公表を除く)。佐賀県の540億円は飛び抜けている。

 さらに、「大会運営費」は平均54億円、「競技力向上費」は同34億円。仮に同等だと、佐賀県はパークの施設整備費を足すだけでも、総額約630億円に及ぶ。

 県議会は昨年12月にアリーナの建設費増を含む補正予算案を可決、今年3月にはパークの指定管理者に関する議案も可決した。ただ、今も「佐賀県は人口81万人なのに規模が大きすぎる。必ず負の遺産になる」(自民県議)といった声が残る。県幹部の一人も「知事の肝いり事業だが、巨額の工事費に疑問は残る」と声を潜める。

 アリーナの建設意義について、山口祥義知事は「九州の中心に位置し、アジアとも近い佐賀県だからこそ、施設が生きたものになる。アリーナは佐賀躍動の象徴だ」と強調。県は約10年間の経済波及効果として、アリーナで776億円、パーク全体で1283億円と試算する。

 両大会を見すえたパーク全体の整備についても、山口知事は多くの競技施設が建設から時間が経ち、大規模な改修をしてこなかったと必要性を主張。さらに、アリーナは防災拠点としても活用する考えで、建設費の一部の約52億円は、国が7割を負担するという地方債の「緊急防災・減災事業債」が使えるという見通しも示した。

 02年の高知国体当時、「身の丈にあった運営」を提唱し話題を呼んだ橋本大二郎・元高知県知事は「国体を理由に大型施設を造るのは意味がない。高知県でも施設を新設しなかったり、改修で済ませたりした。五輪ではないのだから、選手が公平に競争できればいい」と話す。

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