大学生のリスク、9年での変化は 依然として宗教勧誘 

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編集委員・増谷文生
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 アルコール中毒やSNSトラブルなど、大学生が遭遇しやすい危険や対応法などをまとめた「大学生が狙われる50の危険」の第4版が、今年も出版された。三菱総合研究所大学生協の団体が9年前から3年ごとに発刊してきた、累計7万部の人気シリーズだ。各版を比べると、学生を取り巻くリスクとともに社会の変容も見えてくる。

 サークルなどを装った悪質な宗教団体による勧誘、飲酒・アルコール中毒、パワハラアカハラ……。2011年2月に出た第1版の「大学生がダマされる50の危険」が取り上げた項目は、人と人の間のトラブルが中心だった。また、水漏れ事故、ゴミの出し方、騒音といった一人暮らしの注意点も扱っていた。

 だが、発刊直後に東日本大震災東京電力福島第一原発事故が発生。さらにSNSやスマートフォンの普及に伴い、14年2月に大幅に内容を更新して第2版を出した。自然災害や事故の章を新設し、ネット関連トラブルの部分を全面改訂。就職活動関連の項目を追加し、メンタルヘルスについての記述を充実させた。

 17年2月発刊の第3版には、16年夏の選挙から導入された「18歳選挙権」を盛り込んだ。選挙期間中、SNSに候補者のメッセージを転載して応援するのは問題ないが、電子メールで友人に転送するのは、公職選挙法で禁止されていることなどを紹介。ルールを守って投票に行くよう促している。このほかスマホに重点を置いてネットトラブルの内容を改め、学生が手に取りやすいようにと全6章の冒頭に7ページずつ関連のマンガを入れる工夫も施した。

 近年、台風や集中豪雨の被害が相次いだことを受け、2月に出た第4版は自然災害の項目を充実させた。スマホを使った災害時の情報収集法や、被災地でボランティア活動をする際の注意点も掲載した。

 約半数の学生が奨学金を受けている現状をふまえ、返還できずに本人や親族が自己破産するケースが相次いでいることも扱う。返済が必要な貸与型が多く、利子が付くものもあることを説明し、目先のお金が手に入ったからと安心して使い過ぎないよう注意を促す。

 第1版から掲載が続く問題は、宗教団体などからの勧誘やアルコール中毒、マルチ商法など。一方、大学生の生活スタイルの変化を受けて、扱いを小さくした問題もある。喫煙、電話勧誘、校則違反といった項目は姿を消した。

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■次の版はコロナも…

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