病院勤務者に「出歩くな、ウイルスがうつる」違法性は?

コロナQ&A

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コロナ法律相談 回答:友弘克幸弁護士

 新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方や職場環境も大きく変わりました。心配なのは、こうした状況でのハラスメントや差別です。どう対応すれば良いか。記者が取材した事例などをもとに、専門家に尋ねました。(聞き手・山根久美子)

 Q 看護師として医療機関で働いていますが、近所の人から「出歩くな、ウイルスがうつる」と言われてつらいです。我慢するしかないのでしょうか。

 A 新型コロナウイルスの感染拡大にともない、医療従事者への不当な差別や偏見が深刻な問題となっています。報道によると、職員に陽性反応が出た医療機関の職員が、タクシーに乗車拒否されたり、保育所に子供の受け入れを断られたりしているようです。

 日常生活を営む権利を否定する「出歩くな」という発言は、経緯にもよりますが、職業を理由とした差別的言動と言わざるを得ません。民法上の不法行為に当たり、言った人が損害賠償責任を負う可能性があります。

 勤務先の医療機関にも、看護師さんからの相談窓口を設けるなどの取り組みを求めたいところです。今年1月に告示された国のパワハラ防止指針では、顧客など第三者からのハラスメントなどで労働者が仕事ができなくならないよう、事業主は適切に対応することが望ましいとしています。従業員である看護師が安心して働けないのであれば、近所の住民を指針が示す第三者とみることもできます。

 国も明確なメッセージを出し続けるべきでしょう。先日、トラック運転手のいる世帯の子どもが自宅待機を求められたというケースについて、国土交通大臣が「大変驚き、憤りを感じた」と発言しました。医療や物流を支える仕事の大切さを、みんなが理解しなければなりません。

    ◇

ともひろ・かつゆき 2004年弁護士登録。労働者の立場で解雇や残業代請求などの労働問題に取り組む。大阪労働者弁護団事務局長。

ハラスメントに関する相談窓口やQ&A

・ハラスメント悩み相談室(厚生労働省の委託事業)https://harasu-soudan.mhlw.go.jp/別ウインドウで開きます

・全国労働相談(全労協)0120・501・581

・なんでも労働相談ホットライン(連合)0120・154・052

・新型コロナウイルス感染症に関する特別労働相談窓口(各地の労働局)

・新型コロナウイルスに関するQ&A(厚労省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html別ウインドウで開きます

・新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A(日本労働弁護団http://roudou-bengodan.org/covid_19/別ウインドウで開きます

・職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト(厚労省)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617721.pdf別ウインドウで開きます

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 ※Q&Aの内容は、身近な法律問題について解決の参考となるよう、あくまで一つのケースを示したものです。個別の事情によっては、回答内容があてはまらないことがあります。

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