鏡で磨く「在宅でもさぼらない心」 将棋・豊島将之名人

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聞き手・佐藤圭司
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 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちのくらしや社会を大きく変えました。直面する不安に、どう向き合い、乗り越えていけばいいのか。各界で活躍する人たちに尋ねました。

 4月8、9日に第1局が指される予定だった第78期将棋名人戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)七番勝負が延期され、まだ開幕していません。開幕は6月に再延期が決まり、七番勝負を6~8月に開催する方向で検討する、とのことです。私にとっては初めての名人の防衛戦で、対局したい気持ちはありました。また、楽しみにしてくださっているファンの方も多いはずで、残念な気持ちです。

 ただ、当初の予定では第1局はホテル椿山荘東京(東京都文京区)、第2局は八幡総本宮・宇佐神宮(大分県宇佐市)、第3局は戸田家(三重県鳥羽市)、第4局は緑霞山宿・藤井荘(長野県高山村)、第5局は倉敷市芸文館(岡山県倉敷市)、第6局は常磐ホテル(甲府市)、第7局は天童ホテル(山形県天童市)。名人戦七番勝負は例年、全国各地を巡ります。「移動中に自分が感染して、他の人にうつすことがあってはいけない」とも感じていましたので、その意味ではホッとしました。

 対局が再開された時、良い将棋を指したい。そのために自宅で将棋の勉強を続けています。

 将棋の棋士にとって有力な勉強法の一つは、仲間の棋士と練習将棋を指す「研究会」です。私も20代半ばまでは盛んにやっていましたが、2014年春に将棋ソフトと棋士が勝負する「電王戦」に出場したのを機に、私は研究会はやめて、自宅で一人で研究するスタイルに変えました。当時は、将棋ソフトの進化が目覚ましく、例えば、最新のソフトが少し前のソフトと対戦すると、8~9割勝つ、といった具合でした。ソフトの進化やそれに伴って生まれてくる新しい指し方をフォローしながら、目の前の対局の準備をするので精いっぱい。家の外に出かけて研究会をする時間的な余裕もなかった、というのが正直なところでした。

 在宅での研究の長所は「移動の時間がかからないこと」「他人に左右されず、自分がそのときに取り組みたいテーマについて考えられること」。一方、短所は「他者からの刺激が得られないこと」「さぼったり、だらけたり、が起きやすいこと」でしょうか。

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 自分以外のアイデアに触れる…

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