角拓哉
ショッピングモールなどで客と向き合って絵を描いてきた似顔絵師たちが、オンラインの活用に挑んでいる。新型コロナウイルスの影響で始めた苦肉の策だったが、オンラインの強みを生かすことで新たなサービスにもつながっている。
「好きな色はなんですか」「お昼何食べたの?」
名古屋市のビルの一室で1日、似顔絵師がパソコンに語りかけながら筆を走らせていた。画面には幼い女の子。完成した絵を見せると、にっこり笑った。
プロの作家が数人所属する「プレジャー企画」(同市)は4月中旬、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を活用した有料の似顔絵制作を始めた。
きっかけは新型コロナの感染拡大だ。客との交流を大切にする対面スタイルにこだわってきたが、ショッピングモールなどが軒並み休業に。参加を予定していた結婚式や商業イベントなども中止が相次ぎ、活動の場を失った。3、4月の売り上げは、前年に比べて9割減ったという。
「このままでは作家が失業する」。危機感を抱いた社長の大棟耕介さん(51)は、オンラインへのシフトを決めた。試してみると、コミュニケーションに不自由せず、表情も十分にとらえることができた。制作にかかる時間も15分程度と以前と変わらなかった。
大棟さんは「背に腹は変えられず始めたが、お客さんの評判はとてもいい。遠方からの依頼もあり、世間との距離が一気に縮まった気がする」と話した。
新たな需要が見つかる可能性も…